【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
「え!これ、美味しすぎる……!」
戦利品のうちの一つを頬張ったカヤは、雷に打たれたような衝撃を受けた。
つい先ほど近くの露店で買ったその食べ物は、誰も見たことが無かった。
ふわふわとした白い生地の丸っこいそれは、肉包子と言うらしい。
店主曰く、最近大陸の方から伝わってきた食べ物と言う事だ。
蒸籠から取り出されたばかりの肉包子は、半分に割ると中からほかほかとした肉の練り物のようなものが顔を覗かせる。
生地と共に口に含むと、溢れんばかりの肉汁が染みだしてきて、生地の食感と相まってとても美味しかった。
カヤに勧められてそれを食べた二人も、興奮したように頷いた。
「本当ね!これ、一つじゃ足りないわよ!」
「戻ってもう少し買いましょう!」
三人の意見が見事に一致したため、カヤ達は来た道を戻って、この美味しすぎる肉包子を大量に購入した。
カヤが露店の主人にお金を渡していると、ユタが何かに気が付いたような声を上げた。
「……あれ、ミナトとヤガミさんじゃない?」
そちらを向くと、人ごみを縫うようにして二人が歩いてくるのが見えた。
「―――ああ、お前等か」
「皆さん、こんにちは。楽しんでいらっしゃるようで何よりです」
近くまで来たミナトとヤガミは、三人に気が付いて寄ってきた。
心なしかげっそりしている二人に、ナツナが気遣うような表情を見せる。
「お仕事お疲れ様なのです。お二人とも、お顔が疲れてますね」
確かに二人共、疲弊しているようだった。
恐らく朝からぶっ通しで見回りをしているに違いない。
「あの、お腹減ってません?良かったらこれ食べて下さい」
同じく二人を案じたカヤは、腕の中の肉包子を勧めた。
すると、ミナトが怪訝そうに眉を寄せる。
「どんだけ食う気だよ。太るぞ」
腕の中の肉包子は、到底食べきれないような量だったのだ。
「ち、違うよ!これは翠様に持ってくの!お土産だよ!」
慌てて否定をする。
あんまりにも美味しかったから、露店を楽しめない翠にも持って行こうと思って、多めに買ったのだ。
と言いつつ、半分くらいは自分で食べるつもりだったが、まあそこは黙っておこう。
「どうだかな」と笑いつつ、ミナトは肉包子を受け取った。
「じゃ、ありがたく貰うわ。ほれ、ヤガミも」
「では頂きます。カヤ様、ありがとうございます」
「いえいえ」
さっそく肉包子を頬張った二人は、予想通りすぐに驚いた表情を見せた。
「へー。美味いな、これ」
「本当に!疲れた身体に染みますねー」
「年寄りかよ」
もぐもぐと肉包子を食べ勧める二人を笑いながら見ていたカヤは、ふと気が付いた。
(あれ……怪我だらけ)
肉包子を手にするミナトの指に、包帯がぐるぐると巻かれているのだ。
一本や二本では無い。ほぼ全ての指に、だ。
戦利品のうちの一つを頬張ったカヤは、雷に打たれたような衝撃を受けた。
つい先ほど近くの露店で買ったその食べ物は、誰も見たことが無かった。
ふわふわとした白い生地の丸っこいそれは、肉包子と言うらしい。
店主曰く、最近大陸の方から伝わってきた食べ物と言う事だ。
蒸籠から取り出されたばかりの肉包子は、半分に割ると中からほかほかとした肉の練り物のようなものが顔を覗かせる。
生地と共に口に含むと、溢れんばかりの肉汁が染みだしてきて、生地の食感と相まってとても美味しかった。
カヤに勧められてそれを食べた二人も、興奮したように頷いた。
「本当ね!これ、一つじゃ足りないわよ!」
「戻ってもう少し買いましょう!」
三人の意見が見事に一致したため、カヤ達は来た道を戻って、この美味しすぎる肉包子を大量に購入した。
カヤが露店の主人にお金を渡していると、ユタが何かに気が付いたような声を上げた。
「……あれ、ミナトとヤガミさんじゃない?」
そちらを向くと、人ごみを縫うようにして二人が歩いてくるのが見えた。
「―――ああ、お前等か」
「皆さん、こんにちは。楽しんでいらっしゃるようで何よりです」
近くまで来たミナトとヤガミは、三人に気が付いて寄ってきた。
心なしかげっそりしている二人に、ナツナが気遣うような表情を見せる。
「お仕事お疲れ様なのです。お二人とも、お顔が疲れてますね」
確かに二人共、疲弊しているようだった。
恐らく朝からぶっ通しで見回りをしているに違いない。
「あの、お腹減ってません?良かったらこれ食べて下さい」
同じく二人を案じたカヤは、腕の中の肉包子を勧めた。
すると、ミナトが怪訝そうに眉を寄せる。
「どんだけ食う気だよ。太るぞ」
腕の中の肉包子は、到底食べきれないような量だったのだ。
「ち、違うよ!これは翠様に持ってくの!お土産だよ!」
慌てて否定をする。
あんまりにも美味しかったから、露店を楽しめない翠にも持って行こうと思って、多めに買ったのだ。
と言いつつ、半分くらいは自分で食べるつもりだったが、まあそこは黙っておこう。
「どうだかな」と笑いつつ、ミナトは肉包子を受け取った。
「じゃ、ありがたく貰うわ。ほれ、ヤガミも」
「では頂きます。カヤ様、ありがとうございます」
「いえいえ」
さっそく肉包子を頬張った二人は、予想通りすぐに驚いた表情を見せた。
「へー。美味いな、これ」
「本当に!疲れた身体に染みますねー」
「年寄りかよ」
もぐもぐと肉包子を食べ勧める二人を笑いながら見ていたカヤは、ふと気が付いた。
(あれ……怪我だらけ)
肉包子を手にするミナトの指に、包帯がぐるぐると巻かれているのだ。
一本や二本では無い。ほぼ全ての指に、だ。