【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
答を求められた膳は、肩をすくめながら説明をした。
「実はこの娘が盗みを働いたという密告を受けたのでな、私の方で咎めを与えようとしていたところなのだ」
飄々と言ってのける膳の後ろで、カヤとナツナは必死に首をぶんぶんと横に振る。
ミナトは「分かってる」とでも言うような視線を二人に送ってきた。
良かった。
どうやらミナトは膳の言う事が嘘だと分かってくれているようだ。
「膳様、失礼ながら翠様を通さずに独断で民に罰を与えるおつもりでしょうか。そのような事は例え豪族の膳様とて禁じられております」
低姿勢のまま、しかしはっきりとした口調でミナトは言う。
「馬鹿者。これは『私の民』がしでかした事であるぞ。わざわざお忙しい翠様のお手を煩わせるわけにもいきまい」
膳はふんぞり返りながらそう言い放った。
聞いて呆れる。
翠様を通せば話しが大きくなりため、自分の嘘が露見するのを恐れているだけだろう。
「それでも、特例は認められません。どうか翠様へのお目通りをお願い致します」
「その必要はない。私の領地内の事は私が片を付ける」
「膳様、確かにここは貴方様の領地です。しかし、それ以上に翠様の治める土地でもあります。最終的にこの者達を罰するかどうかを決めるのは翠様で……」
「っええい、煩い!」
頑として譲らないミナトに、膳はとうとう声を荒げた。
「たかが屋敷の兵ふぜいが、私に口答えをするな。己の立場をわきまえろ!」
非常に苛立った様子で、膳が喚いた。
その大声に驚き、ナツナが肩を揺らす。
それでもミナトは怯む様子を見せず、淡々と言った。
「恐れながら、私は翠様より中委の位を与えられております。この事に意見をするぐらいの権限はあると自負しております」
ミナトの口から出てきた言葉に、カヤは驚いた。
国の検察を取り仕切る最大権力が『大委』である。
その次位に位置する『中委』に、この年齢ながらミナトが就いているとは思わなかった。
もしかすると、ミナトならどうにかこの場を治めてくれるかもしれない、と胸に小さな希望が湧く。
「……くっ、ははは。ならば、そなたの意見を聞いてやろうではないか」
膳は唐突に笑いだし、そんな事を言った。
そしてミナトが何かを言う前に、更に言葉を続けた。
「しかし聞くだけだ。そなた如きの言葉で私の考えを変える事は出来まいよ。という事はお前の話しを聞くだけ時間の無駄という事だ。よって私はお前の意見は聞かぬ」
「っ膳様!」
まるで屁理屈のような事を言う膳に、今度はミナトが声を荒げる。
そんなミナトを無視し、膳は自分の取り巻き達に向かって命令をした。
「おい、お前達!もう良いからさっさとこの娘達を私の家に連行しろ!」
その言葉に、後ろの方で待機していた男達がわらわらと近寄ってくる。
思わず身構えるカヤの腕を、膳は強い力で掴んだ。
「この金髪の娘は私が直々に連れて帰る。お前達はそっちの黒髪の方を連れていけ!」
絶望感が一気に胸の中に広がる。
「実はこの娘が盗みを働いたという密告を受けたのでな、私の方で咎めを与えようとしていたところなのだ」
飄々と言ってのける膳の後ろで、カヤとナツナは必死に首をぶんぶんと横に振る。
ミナトは「分かってる」とでも言うような視線を二人に送ってきた。
良かった。
どうやらミナトは膳の言う事が嘘だと分かってくれているようだ。
「膳様、失礼ながら翠様を通さずに独断で民に罰を与えるおつもりでしょうか。そのような事は例え豪族の膳様とて禁じられております」
低姿勢のまま、しかしはっきりとした口調でミナトは言う。
「馬鹿者。これは『私の民』がしでかした事であるぞ。わざわざお忙しい翠様のお手を煩わせるわけにもいきまい」
膳はふんぞり返りながらそう言い放った。
聞いて呆れる。
翠様を通せば話しが大きくなりため、自分の嘘が露見するのを恐れているだけだろう。
「それでも、特例は認められません。どうか翠様へのお目通りをお願い致します」
「その必要はない。私の領地内の事は私が片を付ける」
「膳様、確かにここは貴方様の領地です。しかし、それ以上に翠様の治める土地でもあります。最終的にこの者達を罰するかどうかを決めるのは翠様で……」
「っええい、煩い!」
頑として譲らないミナトに、膳はとうとう声を荒げた。
「たかが屋敷の兵ふぜいが、私に口答えをするな。己の立場をわきまえろ!」
非常に苛立った様子で、膳が喚いた。
その大声に驚き、ナツナが肩を揺らす。
それでもミナトは怯む様子を見せず、淡々と言った。
「恐れながら、私は翠様より中委の位を与えられております。この事に意見をするぐらいの権限はあると自負しております」
ミナトの口から出てきた言葉に、カヤは驚いた。
国の検察を取り仕切る最大権力が『大委』である。
その次位に位置する『中委』に、この年齢ながらミナトが就いているとは思わなかった。
もしかすると、ミナトならどうにかこの場を治めてくれるかもしれない、と胸に小さな希望が湧く。
「……くっ、ははは。ならば、そなたの意見を聞いてやろうではないか」
膳は唐突に笑いだし、そんな事を言った。
そしてミナトが何かを言う前に、更に言葉を続けた。
「しかし聞くだけだ。そなた如きの言葉で私の考えを変える事は出来まいよ。という事はお前の話しを聞くだけ時間の無駄という事だ。よって私はお前の意見は聞かぬ」
「っ膳様!」
まるで屁理屈のような事を言う膳に、今度はミナトが声を荒げる。
そんなミナトを無視し、膳は自分の取り巻き達に向かって命令をした。
「おい、お前達!もう良いからさっさとこの娘達を私の家に連行しろ!」
その言葉に、後ろの方で待機していた男達がわらわらと近寄ってくる。
思わず身構えるカヤの腕を、膳は強い力で掴んだ。
「この金髪の娘は私が直々に連れて帰る。お前達はそっちの黒髪の方を連れていけ!」
絶望感が一気に胸の中に広がる。