【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
男達は2人がかりでナツナの両腕を掴み、無理やり立ち上がらせた。
「いやっ、放して下さい……!」
首を激しく振るナツナをよそに、まるで引きずるようにしてその体を連れていこうとする。
「膳様!このような事はお止め下さい!」
強い口調で詰め寄るミナトに、膳は一切聞く耳を持たない。
「私はただ罰を受けるにふさわしい者を裁くだけだ!あのような者達を放っておけば、この国は無法地帯になるぞ!……って、おい!待て、小娘!」
カヤは懇親の力で膳の手を振りほどいた。
無意識のままにナツナの方へ走る。
そして、成すすべも無く連行されていくナツナに向かって手を伸ばした。
「やめて!」
その細い手首をしっかりと握りしめる。
「この子を放して!この子は何もしていないの!お願いだから!」
ナツナを拘束している男達の手を解こうと、必死に揉みあう。
(絶対に連れて行かせない!ナツナはだけはっ……!)
もみくちゃになりながらも抗うカヤに、ナツナが泣きそうな声を上げた。
「カヤちゃん!私なら大丈夫ですから……!」
こんな時にまでカヤを庇おうとするナツナの優しさに、心臓がわし掴みにされたように痛くなった。
「駄目!ねえ、お願い!ナツナは何も悪い事なんてしてないの!」
「邪魔だ!退け!」
「きゃあ!」
強い力で突き飛ばされ、カヤは後方に吹っ飛んだ。
勢い余って背中から地面に倒れ込み、一瞬青空が見えたかと思ったら、ゴンッ!と凄まじい衝撃が頭に走った。
眼の前に星が飛び散り、意識が瞬間的に遠のきかける。
「おい、大丈夫か!」
膳と言い争っていたらしきミナトが、思いっきり頭を打ったカヤを見て、焦ったように走ってきた。
白い光が瞬く視界の中、これ幸いとでも言うように、膳がナツナの方へ歩いて行くのが見えた。
―――――このままじゃ、ナツナまで咎めを受ける。
身を引き裂くような恐ろしさに、背筋がぞっとした。
「ミナト!お願い!」
藁にも縋る思いで、カヤはミナトの両肩を掴んだ。
「誰でも良い!膳よりも位の高い人を連れてきて!」
「なっ、は……?」
必死の形相のカヤに、ミナトが戸惑ったような声を上げる。
「あの男を止めなきゃ!早く!呼んできて!」
「でも俺がこの場を離れたら、お前らがっ……!」
その視線の先には、必死に抵抗するナツナの姿が。
膳は取り巻きの男達に何か指示を与えている。
それが終われば、すぐにでもカヤを連行しにやってくるだろう。
「良いから!私が言ったんじゃ絶対に誰も聞いてくれない!」
掴んだ両肩を揺さぶりながら、縋りつくように叫ぶ。
「ミナトならっ……ミナトの言う事になら、耳を傾けてくれる人が居るでしょう!?」
タケルの一番弟子だと言われ、この若さで高い地位に居る、このミナトなら。
笑えるほどに何の力も無くて、馬鹿で鈍間で、それなのに優しく笑いかけてくれる貴重な少女さえ不幸に巻き込んでしまうような自分とは、正反対のミナトなら。
その瞳を真っすぐに見つめる。
「お願いっ、ミナト……ナツナを助けて……!」
我ながら情けない科白だった。
自分のせいで陥ったこの状況の救いを他人に求めるなど、なんと狡い事。
「いやっ、放して下さい……!」
首を激しく振るナツナをよそに、まるで引きずるようにしてその体を連れていこうとする。
「膳様!このような事はお止め下さい!」
強い口調で詰め寄るミナトに、膳は一切聞く耳を持たない。
「私はただ罰を受けるにふさわしい者を裁くだけだ!あのような者達を放っておけば、この国は無法地帯になるぞ!……って、おい!待て、小娘!」
カヤは懇親の力で膳の手を振りほどいた。
無意識のままにナツナの方へ走る。
そして、成すすべも無く連行されていくナツナに向かって手を伸ばした。
「やめて!」
その細い手首をしっかりと握りしめる。
「この子を放して!この子は何もしていないの!お願いだから!」
ナツナを拘束している男達の手を解こうと、必死に揉みあう。
(絶対に連れて行かせない!ナツナはだけはっ……!)
もみくちゃになりながらも抗うカヤに、ナツナが泣きそうな声を上げた。
「カヤちゃん!私なら大丈夫ですから……!」
こんな時にまでカヤを庇おうとするナツナの優しさに、心臓がわし掴みにされたように痛くなった。
「駄目!ねえ、お願い!ナツナは何も悪い事なんてしてないの!」
「邪魔だ!退け!」
「きゃあ!」
強い力で突き飛ばされ、カヤは後方に吹っ飛んだ。
勢い余って背中から地面に倒れ込み、一瞬青空が見えたかと思ったら、ゴンッ!と凄まじい衝撃が頭に走った。
眼の前に星が飛び散り、意識が瞬間的に遠のきかける。
「おい、大丈夫か!」
膳と言い争っていたらしきミナトが、思いっきり頭を打ったカヤを見て、焦ったように走ってきた。
白い光が瞬く視界の中、これ幸いとでも言うように、膳がナツナの方へ歩いて行くのが見えた。
―――――このままじゃ、ナツナまで咎めを受ける。
身を引き裂くような恐ろしさに、背筋がぞっとした。
「ミナト!お願い!」
藁にも縋る思いで、カヤはミナトの両肩を掴んだ。
「誰でも良い!膳よりも位の高い人を連れてきて!」
「なっ、は……?」
必死の形相のカヤに、ミナトが戸惑ったような声を上げる。
「あの男を止めなきゃ!早く!呼んできて!」
「でも俺がこの場を離れたら、お前らがっ……!」
その視線の先には、必死に抵抗するナツナの姿が。
膳は取り巻きの男達に何か指示を与えている。
それが終われば、すぐにでもカヤを連行しにやってくるだろう。
「良いから!私が言ったんじゃ絶対に誰も聞いてくれない!」
掴んだ両肩を揺さぶりながら、縋りつくように叫ぶ。
「ミナトならっ……ミナトの言う事になら、耳を傾けてくれる人が居るでしょう!?」
タケルの一番弟子だと言われ、この若さで高い地位に居る、このミナトなら。
笑えるほどに何の力も無くて、馬鹿で鈍間で、それなのに優しく笑いかけてくれる貴重な少女さえ不幸に巻き込んでしまうような自分とは、正反対のミナトなら。
その瞳を真っすぐに見つめる。
「お願いっ、ミナト……ナツナを助けて……!」
我ながら情けない科白だった。
自分のせいで陥ったこの状況の救いを他人に求めるなど、なんと狡い事。