【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
「こ、これで良いのっ?間違ってない!?」
「だから、合ってるとか間違ってるとか気にしなくて良いのよ!……ほら、交代!」
繋いでいた手がサッと解かれ、今度は流れるようにしてナツナがカヤの手を握る。
隣では、逃げようとしていたミナトの衣を、ユタが引っ掴んで引き戻していた。
「今度は私とです!」
ナツナと手を取り合いながら、覚えたての動きを、おぼつかない足取りながらも夢中で繰り返す。
大きな炎がパチパチと爆ぜて、幾つもの笑い声に融けていく。
そんなはずないのに、まるでこの場の全員が一つに繋がっているみたいな一体感。
感じた事のない胸を躍らせる刺激が、頭の中を幸福で満たしていくのが分かった。
「カヤちゃんと踊れるなんて、私とっても嬉しいです!」
心底嬉しそうに笑うナツナが眩しくて、嬉しくて、カヤは頬を緩めた。
「うん、私も……!」
息を弾ませながら言ったカヤに、ナツナの笑顔が大きくなる。
それを見たカヤの嬉しさも、とても大きく膨れ上がった。
「さ、そろそろ交代しましょう!」
一回し分余計に踊った頃、そう言ってナツナがカヤをミナトの方へと引っ張り、手を放した。
それを見計らったようにユタもミナトの手を放す。
あっという間にナツナとユタが手を握り合って踊りだし、その場にはカヤとミナトが残された。
「……あ、」
どうしよう。
思わずその場に立ち尽くす。
―――すると、カヤの右手をミナトの手のひらが攫った。
驚いてミナトを見やる。
彼はやけくそ気味の表情でカヤの手を握り締めていた。
「……え?踊ってくれるの?」
半信半疑で尋ねると、ふんっと鼻を鳴らされた。
「お前みたいな素人じゃ役不足だけどな」
「う、うるさいなっ……わ!」
噛みつくように言うと同時、強い力で引かれ思わず声を上げる。
ナツナやユタとは違う、荒っぽい手つき。
それに急き立てられてカヤの動きも段々と無茶な速さになっていく。
足がもつれそうになって、それでもミナトの屈強な腕がカヤをまた旋律に載せ直す。
「ちょ、ミナトっ、早い早い!」
「ははっ!こんぐらいでへばってんじゃねーよ!」
堪らず弱音を吐いたカヤに、なんとミナトがごく自然に笑った。
(あ、笑った)
しかしその貴重な笑顔を拝む暇も無く、その場でぐるぐる回らされる。
景色が流れて、橙色が尾を引いて、一瞬だけミナトが見えて、また景色が流れていく。
何も考えられなくなる。
息を潜める不安も悲しみも、全部滲んで消えていく。
どうしよう。どうしよう。
真っ白だ。全部全部、真っ白だ!
「うおっ……と、あぶね」
回りすぎてふらついたカヤを、ミナトが身体で受け止めた。
「だから、合ってるとか間違ってるとか気にしなくて良いのよ!……ほら、交代!」
繋いでいた手がサッと解かれ、今度は流れるようにしてナツナがカヤの手を握る。
隣では、逃げようとしていたミナトの衣を、ユタが引っ掴んで引き戻していた。
「今度は私とです!」
ナツナと手を取り合いながら、覚えたての動きを、おぼつかない足取りながらも夢中で繰り返す。
大きな炎がパチパチと爆ぜて、幾つもの笑い声に融けていく。
そんなはずないのに、まるでこの場の全員が一つに繋がっているみたいな一体感。
感じた事のない胸を躍らせる刺激が、頭の中を幸福で満たしていくのが分かった。
「カヤちゃんと踊れるなんて、私とっても嬉しいです!」
心底嬉しそうに笑うナツナが眩しくて、嬉しくて、カヤは頬を緩めた。
「うん、私も……!」
息を弾ませながら言ったカヤに、ナツナの笑顔が大きくなる。
それを見たカヤの嬉しさも、とても大きく膨れ上がった。
「さ、そろそろ交代しましょう!」
一回し分余計に踊った頃、そう言ってナツナがカヤをミナトの方へと引っ張り、手を放した。
それを見計らったようにユタもミナトの手を放す。
あっという間にナツナとユタが手を握り合って踊りだし、その場にはカヤとミナトが残された。
「……あ、」
どうしよう。
思わずその場に立ち尽くす。
―――すると、カヤの右手をミナトの手のひらが攫った。
驚いてミナトを見やる。
彼はやけくそ気味の表情でカヤの手を握り締めていた。
「……え?踊ってくれるの?」
半信半疑で尋ねると、ふんっと鼻を鳴らされた。
「お前みたいな素人じゃ役不足だけどな」
「う、うるさいなっ……わ!」
噛みつくように言うと同時、強い力で引かれ思わず声を上げる。
ナツナやユタとは違う、荒っぽい手つき。
それに急き立てられてカヤの動きも段々と無茶な速さになっていく。
足がもつれそうになって、それでもミナトの屈強な腕がカヤをまた旋律に載せ直す。
「ちょ、ミナトっ、早い早い!」
「ははっ!こんぐらいでへばってんじゃねーよ!」
堪らず弱音を吐いたカヤに、なんとミナトがごく自然に笑った。
(あ、笑った)
しかしその貴重な笑顔を拝む暇も無く、その場でぐるぐる回らされる。
景色が流れて、橙色が尾を引いて、一瞬だけミナトが見えて、また景色が流れていく。
何も考えられなくなる。
息を潜める不安も悲しみも、全部滲んで消えていく。
どうしよう。どうしよう。
真っ白だ。全部全部、真っ白だ!
「うおっ……と、あぶね」
回りすぎてふらついたカヤを、ミナトが身体で受け止めた。