御曹司は偽婚約者を独占したい
「……別に、珍しくないよ。これまでだって友達に何度か誘われて行ってたけど、美咲さんには報告してなかったってだけのことだから」
「ええ? そうだったの?」
再び目を丸くすると、今度はあからさまな溜め息を吐かれてしまった。
私達の会話を聞いていたマスターは、ノブくんの後ろで面白そうに笑っている。
「ノブ、どんまいだなぁ。でもまぁ、ようやく春が来そうで良かったよ」
「本当に、良かったね! ノブくんが選んだ子なら、きっとすごく良い子なんだろうし、このまま上手くいくといいね」
「がんばれ!」と付け加えてガッツポーズをつくると、マスターは更に面白そうに喉を鳴らして笑った。
反対にノブくんは目頭を押さえて複雑な表情をしていたけれど、耳にはほんの少しの赤が差している。
……本当に、良かった。
この二週間、ずっと重たい気持ちでいたから、ノブくんの吉報を聞けたことが素直に嬉しい。
ノブくんは良い子だし、すごく気の効く男の子だから、彼女になる子は幸せだろう。