御曹司は偽婚約者を独占したい
 

「あの男って、美咲さんに付き纏ってたクロスケのことだなってすぐにわかったし、そう言われると俺も断れなくて……」


睫毛を伏せたノブくんは、語尾をすぼめて下を向く。

やっぱり、にわかに信じられない話だ。だけど、ノブくんがこんな嘘を吐くとも思えない。

嘘を吐くメリットもないし、私をからかっているようにも見えなかった。

でも……だとしたら、本当に近衛さんがノブくんに頭を下げたの?

本当に、近衛さんはノブくんに私を家まで送るように頼んだのだろうか。


「それで、美咲さんを家まで送り届けたあとに、ふと冷静になって……ああ、あの人には敵わないって思ったんだ」


「そしたら、なんか、色々諦めがついた」と続けたノブくんは、自嘲するように笑ってみせる。


「敵わないって、なんで……」

「だってさ、ついさっきバチバチやったばかりのガキんちょ相手に、すんなり頭を下げられる大人ってなかなかいないと思うし。美咲さんだって、そう思わない?」

「それ、は……」


尋ねられて、答えに詰まった。

確かにあの日のふたりの雰囲気を思い出したら、どちらかが相手に頭を下げて、何かを頼むような空気ではなかった。

 
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