御曹司は偽婚約者を独占したい
「俺も、ドレスアップした彼女──美咲を見るのが、今から楽しみだ」
言いながら、踵を返す。
そうすれば後ろから、湊の「美咲!? やっぱり実在したのか!」なんて声が聞こえて、再び声をこぼして笑ってしまった。
思い出すのは今朝方、ベッドの上で目を覚ましたばかりの彼女の姿だ。
真っ白なシーツに頬を寄せ、滑らかな肌を出した彼女は一糸纏わぬ姿でも綺麗だった。
彼女が寝ている間に、彼女の左手薬指につけたエンゲージリング。
それを見て流れた彼女の涙は美しく、改めて、彼女を大切にしようと心に誓った。
──ああ、披露宴が終わったら、すぐに彼女を迎えに行こう。
そして、酷く緊張しているであろう彼女を抱きしめ、砂糖のように甘い唇にキスをする。
そうすれば、彼女はとても幸せそうに笑うのだろう。
──今日は、きっと良い日になる。
コーヒーに添えられたシュガーのように、キラキラとしたこの想いに名前をつけるのなら、それはきっと、間違いなく〝愛〟だった。
『シュガーメルト』 fin
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