御曹司は偽婚約者を独占したい
「いえ……こちらこそ、本当にありがとうございました。まさか、あなたが弁護士さんだったなんて知らなくて……。だけど、本当に助かりました。ありがとうございました……」
そっと彼の胸に手を当て身体を離し、改めてそう言うと頭を下げた。
助けてくれたのが、頼りになる彼で良かった。
あのとき私がクロスケさんにハッキリと拒絶の意思を告げられたのも、彼が後ろにいてくれるという安心感があったからだ。
「別に、礼を言われるほどのことはしていない。それに……残念ながら、俺は弁護士資格は持っていない」
「え……っ」
驚いた。
「で、でも、さっき法廷でどうのこうのって……」
「ああ、あれは……言葉に嘘はないけど、相手を訴えるだけなら、別に弁護士ではなくたってできるだろう」
おずおずと尋ねた私を前に、彼は口端を上げて微笑んでから、自身の胸ポケットに入れていた革製の名刺入れを取り出した。
そして、私の手に握られたままだった彼の本を「ありがとう」と言って受け取ったあとで、改めて取り出した名刺を私の前に差し出す。