御曹司は偽婚約者を独占したい
……もう、どうしろっていうのだろう。
近衛さんが仕事に向かったあとも、胸はドキドキと高鳴ったまま、落ち着かない。
こんなに誰かを恋しいと思ったのは初めてで、誰かを待ちながら幸せな気持ちでいられるのも、初めてだった。
「甘い……」
今の気持ちと同じ、甘めのカフェオレを頼んだ私は、奥まった二人がけのテーブル席に腰掛けた。
口の中にはミルクの柔らかな甘みが広がって、それだけでまた、とても幸せな気持ちになった。
* * *
「……そろそろ、かなぁ」
近衛さんが仕事に向かって、もうすぐ一時間半が経とうとしていた。
予定では一時間ほどで戻ると言っていたけれど、まだ近衛さんは戻ってこない。
きっと、仕事が長引いているのだろう。
携帯電話にも連絡を入れようかと思ったけれど、仕事中なら迷惑になってしまうかもしれないと考え遠慮していた。
仮に、こちらに戻れなくなったとしたら、さすがに近衛さんから連絡が来るだろうし……。
私は、彼を信じて待つだけだ。