御曹司は偽婚約者を独占したい
「……もう一杯、飲もうかな」
一杯目のカフェオレ飲み終えたあと、エスプレッソを頼んだのだけれど、少し前には飲み終えてしまった。
あと、どれくらいで近衛さんが戻ってくるかはわからないけれど、空のカップをテーブルに置いたままで居座るのは、お店に申し訳ない。
「美咲さん?」
そうして、追加注文をしようと立ち上がりかけたところで、不意に聞き慣れた声に名前を呼ばれた。
反射的に顔を上げれば視線の先にはノブくんがいて、思わず目を丸くした。
「え、ノブくん?」
昨日のバイト終わりと同じ服装をしている彼は、コーヒーの入ったカップの乗ったトレーを持っている。
「うわー、めちゃくちゃ偶然ですね! もしかして、敵情視察ですか?」
「て、敵情視察って……私は今、人を待ってるところだよ」
「なーんだ、待ち合わせかぁ。美咲さん、休みの日も勉強のためにカフェ巡りしてるって言ってたし、それの一環かと思った」
「それにしても、偶然ですね」なんて、ノブくんが可愛らしい笑顔を見せるから、思わず私までつられて笑顔になる。