初恋をもう一度。【完】

「ただいま~」

「あれ。奈々はなんかいいことでもあったんけ?」

帰宅してリビングに顔を出すと、おばあちゃんがいきなりそんなことを言ってきた。

「ん? なんで?」

「やたら幸せそうな顔してるさ」

「え、え? そうかな?」

おばあちゃんに指摘されるほど、わたしはニヤニヤしていたんだろうか。

確かに帰り道ずっと、第2音楽室での出来事を思い出して、幸せな気持ちになっていたけれど。

「……恋でもしたんけ?」

「え?! ……ちょっ! お、おばあちゃん変なこと言わないで」

急に図星を突かれて、慌てて誤魔化したけれど、顔が真っ赤になってしまったのがわかった。

こんな反応をしたら、どんなに否定したって、もう肯定しているのと同じだ。

「そっけそっけ。奈々ももうそんな年頃になったんねえ」

「へえ。奈々、好きな男の子できたんだ」

キッチンで夕飯の支度をしていたお母さんまで便乗してきた。

「……やだもう、恥ずかしいからやめてえ」

「相手の男の子は『いけめん』なん?」

「もうっ! おばあちゃんてば! わたし着替えてくる!」

わたしはリビングから逃げ出して、2階へと階段を駆け上がった。

だって、恋なんて初めてで。

そんな話、今まで家でしたことないから、とても恥ずかしかった。

*****



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