僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
あたしの婚約者として悠斗が相応しい器かどうか、ひいては悠斗が我孫子会の跡目に値するかどうか。

親父は自らの目で確認しようとしていることに。

端で観てきただけでは、さすがに不安なのだろう。

「金守。あたしにも任侠の血が流れているんだ。ここん所の組の緊張、感じてんだ。みくびるんじゃねえ」

「お嬢。みくびるなど滅相もありやせん。俺たちも詳細は知らねえんです」

金守の声音から、詳細は知らないというのが嘘ではないと思った。

金守の後ろから着いてくる香川は、一言も話さない。

あくまでも護衛だと、頑なに押し黙っているように思えた。

檀家宅での用を済ませて、神社に帰る途中。

金守のスマホが鳴った。

「了解しやした。ご無事で何よりでした。……はい。……はい、承知しやした」

電話を切った金守の顔に、安堵の表情が浮かんでいた。
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