僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
親父と組幹部の話が気になり、眠れない夜を過ごした翌朝。

屋敷内は水を打ったような静けさだ。

いつもなら、そこかしこで組員の声がしているのに、何故か空気が凍てつき肌さえヒリヒリしてくる。

着替えを済ませて自室を出ると、黒いスーツを着た金守が神妙な顔で、あたしに耳打ちした。

「お嬢。大岡顧問がお見えになるそうです」

大岡龍蔵(おおおかりゅうぞう)……仕込み刀の御人がかい?」

「まもなく到着しなさるそうで皆、整然としてお着きを待っているんでさ」

スーツを着ているのは幹部だけでなく、下っ端の組員までスーツを着て玄関口から門柱まで、雁首揃えて列になっていた。

あの野郎、やたら威圧感垂れ流して威嚇してきやがるから、皆ビビってんじゃねえかと思いつつ、あたしもしおらしく、列に加わった。

それから15分ほどが過ぎ、黒塗りのベンツが門扉の前に、遠慮なしに停まった。
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