僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
運転手がスッと、後部座席のドアを開ける。

羽織袴姿の大男が、杖を握りしめて降り立った。

大岡だ。

整列した組員が一斉に、最敬礼する。

大岡のただならぬ威厳に、体が震えた。

「悠斗とか云うガキは何処かのう? 居るなら出てこんかい!」

腹の底から叫んだような大声に、頭の中までガンガンした。

新入りの悠斗はおそらく最後列だ。

「何じゃ、居らんのか。我孫子の突撃隊長3人を差し置いて、松尾組を潰した云うんはハッタリじゃったんかい」

大岡は奥の間へまで届こうかと思うほどの大声を張り上げて、悠斗を挑発しているのだろう。

ーーでも残念だったな、大岡。悠斗はそんな挑発に乗るほど、バカじゃないぜ

あたしの気持ちとは裏腹に場は益々、凍りついた。

大岡が杖に素早く、右手を掛けた。

左手は杖をしっかり握っている。
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