モノクロに咲く花~MadColors~
(壱川君、こっち見てる……?)
しかしそれはほんの一瞬の出来事で、ほんの数秒で宙は去って行ってしまう。遠くなる背中を見つめて
いると、背後からやっと女子達の声が聞こえた。
「あまりにかっこよくて息止まった……」
「私も……」
一花は余韻が抜けず、しばらくそこに立ち尽くしていた。
昼休みが終わる前の予鈴が教室に聞こえてきた。ぐったりとしながら一花はクラスメイト達のノート
を揃え、ため息をついた。
「やっと終わった……」
ほっとしたのもつかの間、周りに誰もいないことに気付き、次が移動教室だったことを思い出す。慌て
て教科書とノートを抱えて教室を飛び出る。廊下を速足で歩き、人気の無い廊下に差し掛かった時、廊下の窓から人影が見えた。それは宙で、寂しげな横顔をしていた。
一花は思わず足を止め、彼のことを食い入るように見てしまう。一花は度々ここで宙を見掛けていた。
見掛ける時は必ず寂しそうな顔をしており、一花はその様子がいつも気になっていた。
(初めて見た時からずっと気になっていた。成績トップで人望も厚くて、私が欲しいものを持っている― ―― もちろんそれもなんだけど、私が壱川君を気にしている理由は、昔を思い出すから。)
一花の脳裏には、広くて頼れる、優しさが滲む背中が思い浮かんでいた。その人を思い浮かべながら、そっと窓に触れ、一花はその届かない存在を確かめた。
「話してみたいな……」
感傷にふけっているのもつかの間、授業の開始を告げるチャイムが鳴ったため、一花は我に返り理科室へ急ぐ。
しかしそれはほんの一瞬の出来事で、ほんの数秒で宙は去って行ってしまう。遠くなる背中を見つめて
いると、背後からやっと女子達の声が聞こえた。
「あまりにかっこよくて息止まった……」
「私も……」
一花は余韻が抜けず、しばらくそこに立ち尽くしていた。
昼休みが終わる前の予鈴が教室に聞こえてきた。ぐったりとしながら一花はクラスメイト達のノート
を揃え、ため息をついた。
「やっと終わった……」
ほっとしたのもつかの間、周りに誰もいないことに気付き、次が移動教室だったことを思い出す。慌て
て教科書とノートを抱えて教室を飛び出る。廊下を速足で歩き、人気の無い廊下に差し掛かった時、廊下の窓から人影が見えた。それは宙で、寂しげな横顔をしていた。
一花は思わず足を止め、彼のことを食い入るように見てしまう。一花は度々ここで宙を見掛けていた。
見掛ける時は必ず寂しそうな顔をしており、一花はその様子がいつも気になっていた。
(初めて見た時からずっと気になっていた。成績トップで人望も厚くて、私が欲しいものを持っている― ―― もちろんそれもなんだけど、私が壱川君を気にしている理由は、昔を思い出すから。)
一花の脳裏には、広くて頼れる、優しさが滲む背中が思い浮かんでいた。その人を思い浮かべながら、そっと窓に触れ、一花はその届かない存在を確かめた。
「話してみたいな……」
感傷にふけっているのもつかの間、授業の開始を告げるチャイムが鳴ったため、一花は我に返り理科室へ急ぐ。