魔法の鍵と隻眼の姫
「お気付きの通り、ドリスター家が誕生した経緯です。そして代々ドリスター家はノアローズ国の宰相として君臨してきました」
そうでしょう?と窺うようにラミンを見つめるキースに言葉もなく頷いたが、ドリスター家の成り立ちなど今まで聞いたことが無い。
父は知っているのだろうか?
いや、知っているからこそ自分に降りかかるなにかから守るために自分を遠くへやった。
そう考えるのが妥当だろうとラミンはため息をつく。
話はまだ終わってませんよ。とキースがまた語りだす。
~~~
国王からドリスターの名を頂き、アドラード・ドリスターが宰相となって数十年後、ふと気付いた。
自分は30代前後の見た目で年若いままなのに、周りの者が年老いていく…。
国王の黒髪に白髪が増え、我妻にはいくつもの隠し切れない皺が増えている。
我が子は既に成人し、自分の後を継ぐため片腕となり働いている。
魔女の血は確実にアドラードの寿命を長くしていた。
誰にも相談できず悩んだアドラードは数十年ぶりに魔女の居る迷いの森へと赴いた。
久しぶりに会う母ヴァルミラは相も変わらず美しい姿でそこにいた。
死んだことにして帰ってこい…。
勝手に出て行った息子を怒ることもなくヴァルミラの言葉にアドラードも頷くしかなかった。
人間は異質なものを排除したがるもの。
今は若いですねと言われるくらいだが、いつまでも年若いアドラードを不審に思う者も出てくるだろう。
ヴァルミラは良く分かっていた。
自分のような辛い思いを息子にも味合わせたくはない母心。
いつ帰るかは後にして王都に帰った数年後、最後まで国を、アドラードや息子たち家族を、ヴァルミラを、案じていた国王が崩御された。
ヴァルミラにそのことを伝えるとこっそりと葬儀に参列し涙を流していた。
それを見たアドラードは道半ばではあるが後は息子に託し頃合いを見て最愛の妻に別れを告げ自分も死んだことにして迷いの森へと帰って行った。
それからまた数百年後、子孫たちがどのように暮らしているか気になったアドラードは王都へ出向いた。
黒い雲が徐々に姿を現してきたからだ。
ヴァルミラが常々言っていた。
「悪しき魂が渦巻くときそなたが世界を救う鍵になろう。その時、人間に手を貸すか貸さないかはお前次第じゃ」
時折寿命の長い者が迷いの森を訪ねてくることがある。
自分の息子もそうだった。
アドラードは子供たちに自分と同じ境遇になったときは自分を死んだことにして迷いの森に来るように言い含めてあった。何年かに一人、二人と、迷いの森に訪ねてくる子孫たち。
その時に人間界で何があったのか聞いていたのがここ100年ほどは誰も来ていない。
雲の存在も気になるしと赴いた王都は数百年の間にかなり目まぐるしく進化し栄えていた。
それと同時に目には見えない黒く渦巻く物がそこかしこから溢れている。
王都の栄とは裏腹に地方は王政に不満を持つ者たちが内戦を繰り返しノアローズ王国は今まさに揺らいでいた。
そうでしょう?と窺うようにラミンを見つめるキースに言葉もなく頷いたが、ドリスター家の成り立ちなど今まで聞いたことが無い。
父は知っているのだろうか?
いや、知っているからこそ自分に降りかかるなにかから守るために自分を遠くへやった。
そう考えるのが妥当だろうとラミンはため息をつく。
話はまだ終わってませんよ。とキースがまた語りだす。
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国王からドリスターの名を頂き、アドラード・ドリスターが宰相となって数十年後、ふと気付いた。
自分は30代前後の見た目で年若いままなのに、周りの者が年老いていく…。
国王の黒髪に白髪が増え、我妻にはいくつもの隠し切れない皺が増えている。
我が子は既に成人し、自分の後を継ぐため片腕となり働いている。
魔女の血は確実にアドラードの寿命を長くしていた。
誰にも相談できず悩んだアドラードは数十年ぶりに魔女の居る迷いの森へと赴いた。
久しぶりに会う母ヴァルミラは相も変わらず美しい姿でそこにいた。
死んだことにして帰ってこい…。
勝手に出て行った息子を怒ることもなくヴァルミラの言葉にアドラードも頷くしかなかった。
人間は異質なものを排除したがるもの。
今は若いですねと言われるくらいだが、いつまでも年若いアドラードを不審に思う者も出てくるだろう。
ヴァルミラは良く分かっていた。
自分のような辛い思いを息子にも味合わせたくはない母心。
いつ帰るかは後にして王都に帰った数年後、最後まで国を、アドラードや息子たち家族を、ヴァルミラを、案じていた国王が崩御された。
ヴァルミラにそのことを伝えるとこっそりと葬儀に参列し涙を流していた。
それを見たアドラードは道半ばではあるが後は息子に託し頃合いを見て最愛の妻に別れを告げ自分も死んだことにして迷いの森へと帰って行った。
それからまた数百年後、子孫たちがどのように暮らしているか気になったアドラードは王都へ出向いた。
黒い雲が徐々に姿を現してきたからだ。
ヴァルミラが常々言っていた。
「悪しき魂が渦巻くときそなたが世界を救う鍵になろう。その時、人間に手を貸すか貸さないかはお前次第じゃ」
時折寿命の長い者が迷いの森を訪ねてくることがある。
自分の息子もそうだった。
アドラードは子供たちに自分と同じ境遇になったときは自分を死んだことにして迷いの森に来るように言い含めてあった。何年かに一人、二人と、迷いの森に訪ねてくる子孫たち。
その時に人間界で何があったのか聞いていたのがここ100年ほどは誰も来ていない。
雲の存在も気になるしと赴いた王都は数百年の間にかなり目まぐるしく進化し栄えていた。
それと同時に目には見えない黒く渦巻く物がそこかしこから溢れている。
王都の栄とは裏腹に地方は王政に不満を持つ者たちが内戦を繰り返しノアローズ王国は今まさに揺らいでいた。