魔法の鍵と隻眼の姫
やむなく再びヴァルミラの元へ赴いたがまだ時期尚早だと首を振られた。

「しかし今やらねば世界が壊れてしまう!」
焦るエドガーの言葉に皆が頷くとヴァルミラは苦悩の末ため息をつきながら頷いた。
「さあ、アドラードよお主の持つ鍵でアストラの右目の封印を開けるのだ。その後何が起こるのか我も分からぬ。覚悟は出来ておるな?」

ヴァルミラの言葉にゴクリと喉を鳴らし息を詰めるアストラと目を合わせた。
頷くアドラードに釣られて頷いたアストラの心の綻びをを誰も気付く事が出来なかった。

そしてヴァルミラが懸念していた通りやはり時期尚早であった。1年掛けても信頼は強固なものにならず綻びから崩れていき信じ抜く事が出来なかったアストラにより黒い雲が暴走を始めた。

黒い雲から嵐のように黒い雨が降り雷が落ち大洪水をもたらし、人々は逃げ惑い我先に助かろうと殺戮を繰り返す有り様に迷いの森にいた者達は戦慄が走り愕然とした。

もう、世界は終わるのか…。
誰もがそう思ったときに命を徒して立ち上がったのはアドラードでアストラの肩を掴み言い聞かせた。

「アストラよ、自分を責めてはならない。人は時に弱い心を持つ。しかしそれでも人は逞しい。必ず立ち直ってくれ。今は押さえるだけで精一杯だがいずれお前達の子孫がまた悪しき魂に立ち向かい世界を本当の意味で救ってくれよう。アストラ、強く生きろ。そしてこの村を、人々を守ってくれ」
アストラに後を託し、ヴァルミラに力を借り真の姿を表し空へと駆け上がった。

地上の人々を守ってくれと頼まれたヴァルミラは息子を一人で渦巻く雲に向かわせたことを後悔した。
どうか、生きて戻れ…。
その願い虚しく雲が霧散し太陽の光が久々に射し込んで来たころ、空から落ちてきたのは力尽きたアドラードの無惨な姿だった。

嘆き悲しんだヴァルミラに言葉もなく項垂れるアストラとエドガー。
最後まで貫き通せば…。
早く世界を救ってくれと言わなければ…。
後悔が胸を締め付ける。

アドラードの子孫でありながら何も出来なかったユーリスとエランも後悔と悲しみが押し寄せる。

「お前達は何をしておる。世界はアドラードが救った。しかし完全に脅威が無くなったわけではない。いずれまた同じ事が必ず起こる。再び世界を救うのはお前達、又はお前達の子孫だ。国を立て直し人々を助けその時を待て。アドラードの死を無駄にするな」

いつまでもその場を動かず立ち竦む4人を諭したヴァルミラはアドラードを弔うためにアドラードが住んでいた家の近くに寺院を建てた。
それは魔法で一瞬のことで驚く4人。
「さあ、復興に少しは我も手を貸してやろう。しかし人の理は人が作るのだ。お前達はお前達の成すべき事を成せ」
< 131 / 218 >

この作品をシェア

pagetop