魔法の鍵と隻眼の姫
「ああ、それから、ラミン様はアドラード様の生まれ代わりです。お気付きかも知れませんが」

「そうか……ああっ!?何だって!」

キースが何でも無いことのようにサラッと言ったのをラミンは聞き流すところだった。
ギョッとしたラミンは背を預けていたソファーから勢いよく起き上がる。

「あれ?気づきませんでした?その白銀の髪にブルーグリーンの瞳は紛れもなくアドラード様の容姿です。だから私は最初にご帰還と言ったのですよ?」

「いや、それはただ子孫だからじゃないのか?」

とぼけた様に言うキースに困惑するラミンは自身の髪をくしゃりと乱し頭を抱えた。

「今まで白銀の髪の者は時々生まれましたが、そのブルーグリーンの瞳の者は一人も生まれなかったのです。そしてあなたはアイオライトの龍の祠に行って力を受け継いだはずですよ」

「力?力ってなんだ?俺は何も…あの透明のやつか?あれから何も変わってないつもりだが…」

確か龍の祠で透明のガラスのようなものが手の上で消えて無くなったことを思い出す。
あの後突然体が熱くなり大変な目に合った。

あの時の事を思い出して顰め面のラミンを心配そうにミレイアが覗きこんだ。
そっと腕に手を添えるとラミンは無意識にその手を取ってぎゅっと握ってきて、ミレイアは驚いて目を見開いたがそのままにした。
その二人の様子を感慨深げに見ていたキースはまた爆弾発言をする。

「その透明なものはアドラード様が亡くなった時に剥がれ落ちた鱗です。力を宿したその鱗をヴァルミラ様に見つからないように拾ったエドガー様とユーリス様は国へ戻る途中にあるアイオライトで祠を作り厳重に結界を張りその中に鱗を供えました。いつか救世主が現れた時に力を与えるために。これはアドラード様の意思でもありました」

ヴァルミラに鱗の事が知られれば咎められる可能性もある。
鱗はそれほど力が宿る代物だそうだ。

「あの、鱗ってどういうことですか?」

聞き捨てならない言葉に混乱極めるラミンに代わりミレイアが聞いた。

「それはもちろん、龍の鱗です。アドラード様の真の姿は龍なのですよ」

「はあっ!?」

当然と言うように言うキースにラミンは思わず立ち上がった。
どういうことだとキースに詰め寄るのをミレイアに止められた。

魔物でも力が強ければ人型になることもできると言う。
知能も高く人間を敵視すれば人間にとって厄介な相手ではあるが、人に興味を持ち友好的な者も少なからずいるらしく、人の中でひっそりと真の姿を隠して生活する者がいるそうだ。
人間にとってはそれは脅威でその者たちは絶対に真実を明かさない。
魔物の中でも力の強い龍が人間と恋に堕ち結ばれ、魔物と人間との間には子が生まれにくいと言われる中生まれたのがヴァルミラでその息子のアドラードも龍の力を持って生まれたそうだ。

「俺も、キースあんたも龍になれるってことか?」

「いいえ、私たちは稀に力を持って生まれることはあっても龍の姿にはなれません。その血はほとんどが人間なのですから。しかし、あなたには龍の印があるはずですよ。その左手…」

キースが指し示す左手にはいつの間にか手首まで広がった黒い痣が見え隠れしていた。
すっと右手で左手を握りしめたラミンは鏡で自分の体に龍が巻き付いている姿を目の当たりにしていた。

「やっぱりこれは龍の痣なのか…大きくなるにつれ鱗も顔もはっきりと見えてきていた」

力尽きた様にトスンとソファーに座ったラミンは呆然としていた。
自分の家の成り立ちから先祖の生まれ変わりだと言われその上この体には龍がいると言う。
余りに突飛な話に付いて行けない。
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