魔法の鍵と隻眼の姫
ふふふっ、と二人で微笑み合ってると不機嫌そうなラミンが割って入る。

「もういいか?城は目の前なんだ先急ぐぞ」

ミレイアの手を引っ張りずんずんと進んでいく。

「やれやれ、あっちもこっちもやきもちやきがいてなかなか初々しいな」

国王が微笑ましそうに呟くとピクッと反応したノニとラミン。
何もなかったような顔をしているが不機嫌さは消せないようだ。

ミレイアが頑張ってラミンの横につくと顔を覗き混んでみたが逸らされてしまった。

まさか妖精さん達にやきもち?
首を傾げるもまた高地で酸素も薄いためか直ぐに息が上がったミレイアは考えることを止め登ることに集中した。

程なくして門の前まで着いた一行。
ここを潜れば霧の城、モリスデンが待ってるはずだ。
緊張感が辺りを漂う。
この先何が待っているのか想像も出来ない。

「行こう」

国王が先頭に立ち歩いて行きそれに続く3人。
扉の前まで行くと重厚な扉がひとりでに開き皆を誘導するようにノニが入っていった。

中に入ると広いホールの真ん中にモリスデンが立っていた。
その回りをノニが飛び回っている。

「ノニやご苦労だった。皆の者、よくぞここまでたどり着いた」

「モリー…」

ミレイアがホッとした表情を浮かべるとよろりとふらついた。

「おい!」

咄嗟にラミンが支えると弱々しい笑みを浮かべる。

「ごめんなさい、ホッとしたら力が抜けて…」

「ったく無理するからだ」

そう言うとラミンはヒョイとミレイアを抱え上げた。

「ラミン!大丈夫よ下ろして!」

「いいから大人しくしてろ」

暴れるミレイアをよっと抱き直して歩き出しモリスデンの前に立ったラミン。
その様子を髭を撫でながら目を細め眺めていた。

「ラミン、よくぞここまで姫を守り通した。ミレイア王女よく頑張りましたな。そのまま少し休んでおくと良い」

そっとミレイアの髪を撫で労った。
ミレイアは目に涙を浮かべ大人しくなる。
今までの事が走馬灯の様に駆け巡る。

「後ろのお二方ともご苦労様じゃった。さあ、上が最後の戦場となる。付いてくるがよい」

大きな階段の前でミレイアは再度降りると言ったがラミンは聞かずに階段を登る。

「重いでしょう、下ろして」

「別に重くはない。それよりしっかり掴まってろ」

下ろしてくれないと悟ったミレイアは大人しく言われた通りラミンの首に手を回しぴったりとくっついた。
ラミンは抱き直すと口元に笑みを浮かべた。

もしかしたら触れ合うのもこれが最後かもしれない。

「まずはヴァルミラ様に会うかね?」

「えっ?いるんですか?」

「確か手の届かない所にいるって言ってなかったか?」

一様に驚く面々を一瞥したモリスデンは一つの扉の前で立ち止まった。

「手の届かぬ所にいるのは違いない」

ギギッと軋む音がして両開きの戸を開け中に入っていくモリスデンに続き入っていくと、そこは広く大きな窓が4つあり中央に祭壇のような物があるだけのシンプルな部屋だった。

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