魔法の鍵と隻眼の姫
「ワシは魔法使いじゃ!色々試した中の一つに過ぎん!」

「イチイチ殴るなくそジジイ!」

憤慨するモリスデンに頭を擦り睨むラミン。

好奇心を持つ瞳でじっと見つめるミレイアと目が合うとモリスデンはまたもや逸らし咳払い。

「ありとあらゆる魔法を試したが起きてはくれなんだ。ヴァルミラ様を頼るのは無理じゃろうて…。ここに連れて来たのは、来たからには会わせた方がいいと思ったまでじゃ」

「そうですか…ですがヴァルミラ様の加護が少しでも助けになってもらえるよう祈りを捧げましょう」

そう言うとキースは手を組み目を閉じて祈りを捧げた。
国王とラミンも立ったままで頭を下げ黙礼する。
ミレイアは手を組みじっとヴァルミラの顔を見つめた。
ふと、傍らに小さなお皿を見つけて、それが龍の祠にあったお皿に似ていると気が付いたミレイアはごそごそと鞄に中を掻き回した。

「どうした?」

ラミンが声を掛けるとハンカチを取り出したミレイアは振り向きながらハンカチを開くとそこにはまだ半分ほど残っていたモッコウの実が出てきた。
あれから何日も経ってるはずなのに未だに瑞々しい艶をしている。

「ほう、それは、モッコウの実。滋養強壮に良く効く。ヴァルミラ様の好きな実じゃ」

「そうなのね?龍の祠でこの実をお供えしたら消えたの。もしかしたらアドラート様も好きだったのかもね」

ミレイアはその実をハンカチごとお皿の上に乗せ目を閉じ手を組み祈った。

どうか見守っていてください。この世界が救われ晴れ渡る空の元、人々が幸せになれるように…。

「おい、これ…」

「おお、これは…」

目を開けるとお皿の上の実がチカチカと光を放ち、ぽろぽろと房から零れ皿に落ちた。
何が起こったのか分からずに見守っていると光は収まり何事もなかったようにシーンとなった。
徐に転がった実を拾い上げたモリスデンは掌の実をみんなに見せた。

「零れ落ちた実は5つ。これはヴァルミラ様が我々に与えてくださった最後の力かもしれぬ。さあ、食べるがよい」

「めちゃくちゃ酸っぱいんだよなこれ…」

ラミンも悶えるほどすっぱかった記憶がよみがえり顔を顰める。
ごくりと喉を鳴らし一つずつ実を取った国王とキースはそれを聞いて食べることに躊躇している。

「ん!おいしい!」

戸惑いなくぱくっと食べたミレイアは口に広がる甘酸っぱさに頬が落ちそうになった。
モリスデンも食べフムフムと頷きながら咀嚼している。
それを見た二人は思い切ってモッコウの実を口に入れた。

「お、これは!」

「うん!おいしいじゃないですか!」

二人は目を見開き甘い味を楽しんでいる。
そんなみんなの様子に疑いの目で見るラミンは嫌そうな顔をしながらパクっと食べた。
恐る恐る噛んでみると甘酸っぱい味が口一杯に広がる。

「あれっ?甘いぞ?」

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