魔法の鍵と隻眼の姫
「て、手が動かねぇ…」

ミレイアに向けたまま金縛りのように動けなくなったラミンは体の中に何かが蠢くような気がして気持ち悪くなる。

「う、うう…」

体の熱さが左手に集中する。
ボウッと光る何かがミレイアの右目に向かって飛び出してきた。

「うあっおいっ!」

光りが右目に吸い込まれそれに続くようにラミンの体から黒い痣が飛び出しズルズルと右目に吸い込まれていった。

「まてまて!何だこれはっ!」

焦ったラミンは止めたくて右手を掴むがどうにも出来ない。
雷に打たれたように気絶していたモリスデンや国王、キースは頭を振りながら起き上がるとラミンとミレイアの異様な光景に言葉を失う。

全てが吸い込まれていきラミンは膝を着いた。痣と共に吹き出していた黒い霧も右目に戻って辺りはシーンと静まり返る。

「うっ、はあ、はあ…」

肩で息を吐き苦しい表情をするラミンにモリスデンが近付く。

「これで鍵は解放された」

「あいつ…小娘は?」

ミレイアを見ると目を見開いたまま呆然としたような顔でまるで意識が無い。
右目はより赤く光りを放っていた。
ミレイアを見つめたモリスデンはラミンに向き直る。

「ミレイアの意識は既に雲の中に飛んでおろう。ラミン、お前にしかミレイアを救うことはできぬ」

立ち上がり息を吐いたラミンが頷く。
その時ミレイアの右目が赤い光りを強めラミンを包むと吸い込まれるように消えてしまった。

その瞬間ミレイアが倒れこむのをモリスデンが抱き止めた。
眠るように目を閉じたミレイアの顔をそっと撫で時折閃光の走る空を見上げた。

「頼むぞ、ラミン、ミレイア」

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