魔法の鍵と隻眼の姫

そして……

・・・・

瞼に光を感じてゆっくりと目を開けた。
目の前には宵から覚めたばかりの空が広がり悠々と白い雲が流れていく。
横を向けばオレンジの光が眩しく目を細めた。

「う…」

呻き声を上げながら上半身を起こし光を見つめる。
朝日が自分に向かって真っすぐと伸びてくる。

辺りを見ればなんとなく見覚えのある丘の上。
枯草が茂っていた地面には青々とした草が広がり所々削られたように土が見えている。

ここは魔物と戦い最後に突き落とした場所だと気づいた。

そしてここは1年前にも来たことがある。
オレンジの光に力が沸き起き上がり座り直すとあの笑顔がふっと浮かんでラミンはぽつりと呟いた。

「ミレイア…もう一度この朝日を見せたい…」

見つめる光りは段々と色を無くし高く上がっていく。

「やっと起きたか、この大馬鹿もんが」

「げっ!いたのかジジイ!」

気付けば横にモリスデンが立っていてラミンはギョッとする。
そういえば魔物の行き先を遮った雷には覚えがあるが…。

「ラミン、心配したぞ」

後ろから声がして振り向けばトニアスが心配顔で立っている。

「ああ、トニアス無事か」

見れば周りにはメリダヌスの兵が各々固まって休んでいた。

「みんな、無事か?怪我した奴らは?」

「…まったく、少しは自分の心配したら?」

呆れ腰に手を置いたトニアスはため息をつく。
皆を心配するラミンにモリスデンの杖が落ちた。
ごつっと大きな音がする。

「いでっ!何すんだジジイ!」

「わしがおるんじゃ!皆無事じゃ!お前もぴんぴんしておろうが!」

いってえな!と言いながら自分で体を触るとどこもなんともない。
服も綺麗になっていてぽかんとしていると兵たちも起きてきてラミンに群がった。

「ラミン殿!今回は本当に助かりました!魔物の脅威にさらされた町もこれで復興できます!」

「あ、ああ、よかったな…」

「さて、わしは帰るとしよう。お主ら気を付けて旅を続けるのじゃぞ?」

皆の勢いに押されたラミンがタジタジになっていると、モリスデンはトニアスに言って聞かせ、さて、と杖を地面に突こうとしたらガシッと肩を掴まれた。

「ちょっと待てジジイ」

「なんじゃ、わしは忙しいんじゃ」

「俺も帰る。瞬間移動ですぐ着くんだろ?俺も連れてけ」

「えっ!?ラミン旅は?まだは半分あるよ?」

驚くトニアスに、何やら含み笑いのモリスデン。
ラミンは子供のように駄々をこねる。

「もういい十分だ。それより帰る。今すぐ帰る。連れてけ。あいつが…」

「…ほう、あいつが、なんじゃ?」

「…あいつが、…待ってる」

ミレイアの顔が浮かぶ。

待ってる気がする。
自分が行かなきゃ、永遠にミレイアは目覚めない…。

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