魔法の鍵と隻眼の姫


~~~♪~~♪~♪~~


何処までも続く広い平原。

一面に白く小さな花が咲き誇り花弁が風に乗って飛んでゆく。

何処からともなく鼻歌が聞こえ

腰まで届く艶めく長い黒髪を靡かせている娘がぽつんと座っていた。

鼻歌を歌っていた主はこの娘。

♪ン~~~ンン~~~ フ……

しかしその鼻歌がぴたりと止まり、代わりに可愛らしい笑い声が聞こえた。

「ふふふっ」



花を摘み香りを楽しむ娘に近づきその背中に話しかけた。

「娘、なぜお前はこんな所にいる」

「ふふっ、なぜかしら?気付いたらここに居たの」

振り向きもせずどこ吹く風な娘は気にしてない様子で白い花弁を掌に載せた。
それは風に煽られ高く高く飛んでゆく。
上を見れば太陽はないのに青い空が広がっている。

「空って青くて綺麗よね。でも、ひとつも雲が無くてつまんないわ。いろんな形を見せる雲は見てて飽きないのに」

「ならば、雲のある世界に行けばよかろう」

そう言うと娘は俯き暗い声を出す。

「…だめよ、まだ行けない」

「なぜ?」

「まだ、何かが足りない…私は待っているの」

「何を?」

「ふふっ、質問が多いですね?ヴァルミラ様」

ゆっくりと振り向いたその紫の瞳は楽しそうに笑っている。
それを見たヴァルミラはミレイアの前に膝を着き顔を覗き込んだ。

「…そうか、お前は…自分で自分に呪いをかけたのだな」

ただふわふわと微笑みを絶やさないミレイア。


「ヴァルミラ様、運命の人っていると思いますか?」

「…さあ、どうだろう…」

「あら、ヴァルミラ様にとってはノアローズの最初の王、クリスリード様じゃないんですか?」

「お前、なぜその名を…」

「我がノアローズの初代国王様です。お名前を知っていて当然です」

もちろん王族直系なのだから知っていて当然。
しかしそれ以上の何かを知っているようでニコリと笑うミレイアに底知れぬ何かを感じる。

「ただ男を待つだけの娘ではないのだな…」

「何の事ですか?」

首を傾げるミレイアにふっと笑ったヴァルミラは手を上げミレイアの額の前に人差し指を立てた。

「アドラードとアストラの代わりに世界を救ったお前に、少しだけ力を貸してやろう。お前の想いが届くように…」

指先から温かな光が灯りミレイアは目を閉じた。


誇り或る王女よ。
お前が目覚めた時に宿る力は人々を守り導く光となろう。
我も、アドラードもお前達を見守っている…。


ふわっと風が抜け、優しい花の香りが鼻をくすぐる。

いつの間にかヴァルミラは消えていた。

目を瞑ったままのミレイアは上を向き微笑んだ。

~~♪~♪~♪~~

そして、また鼻歌が聞こえる・・・・



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