魔法の鍵と隻眼の姫
・・・・

「なんで、ここ…?」

モリスデンに連れられて出てきた場所にラミンは顔をヒクつかせる。
目の前には書類片手に目を丸くする国王が執務机の前に座っていた。

「おや?これは…まだ旅の途中じゃなかったかな?」

「ラミンが突然帰ると言いだしたんですよ」

トニアスが呆れ顔で前に出て一礼する。

「ただいま帰りました、父上」

「うむ、無事で何より。して、なぜここに?」

書類を置き顔の前で手を組み見上げてくる国王にラミンは言葉に詰まる。

「こやつが早くミレイアに会いたいと駄々をこねたのじゃ」

「なっ!?そんなこと言ってねえっ!」

ふんと鼻を鳴らすモリスデンに焦り食って掛かるラミン。

「ほう、ミレイアに会いたいと…?」

「ぐ……はい…」

大人しく素直に返事するラミンに目を細め国王は口元を隠しにやりと笑った。

「私が許可するとでも?」

「え…」

まさかダメだと言われるとは思ってなかったラミンは絶句し、立ち尽くす。
その反応が面白くて国王は笑いを堪えるのに必死だった。

「まずその前に旅の報告を聞こう。各地の様子はどうだった?」

「はあ…」

意気消沈するラミンはそれでもわかりやすく的確に旅であったことを報告する。
それでもそわそわと落ち着かず目を泳がすラミンにとうとうぷっと吹き出してしまった。

「もうよい。後は後日書面で報告するように。ご苦労だったな、もう行ってよいぞ」

「は…え?」

ぽかんとするラミンにトニアスとモリスデンもつい笑ってしまった。

「くくっ、ミレイアに会うのを許可すると言っているのだ。早く行け」

「はっ!…ありがとうございます」

一礼したラミンがすぐさま踵を返しドアの前でぴたりと止まった。

「トニアス、お前は…」

振り返ったラミンを見て笑いを堪えるトニアスは手を振った。

「僕はいいよ。後でゆっくりと会うことにする」

「そうか…」

そう言ってラミンは執務室を出て行った。


「フォッフォッフォッ、ラミンを焦らして楽しむとはアルトバルも人が悪いのう」

「ククッ、ラミンの反応が面白くてつい…。可愛い娘を取られる親の最後のイジワルだ、許せ」

そう言いながらこれからもラミンをイジリ倒すのだろうと国王の悪い笑みを見てモリスデンもトニアスもラミンを少し不憫に思った。

「トニアスも、この旅で少しは成長したようだな?」

たった2週間程度だと思うが旅に出発した時とは見違えるように逞しく見えたトニアス。
帰ってきたら一目散にミレイアの元へと行くと思ったが心も成長したようだ。

「はい、かなりラミンに鍛えられました」

ニコリと笑うトニアスに国王は満足顔で頷いた。

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