魔法の鍵と隻眼の姫
急いで繋いでいた馬の所に行きまた二人で乗ると颯爽と走らせ南へ向かう。
ミレイアは人だかりから離れるとホッとしてラミンに背を預けた。
顔色は悪いが熱が上がっている様子はない。
ちょっと安心したラミンは先を急いだ。
しばらくすると遠くに大きな木が見える、その奥は林。
遠目でもわかる大木は葉が大きく所々に小さな赤い点が見える。あれは実だろう。

「これがモッコウ、大きい……」

真下まで来ると見上げても先が見えないような大木。確かに雨が降れば傘がわりにできそうなほど大きい葉。それに似合わず小さな赤い実が房となって所々に生っていた。
林に向かって二本の獣道が見える。

「あの爺さん左って言ってたな」

右は林に沿って山道を登る道。
左は林の中に向かっておりその奥は谷になっているようで薄暗い。
どう見ても危険極まりない左の道を行くことに思わず喉をゴクンと鳴らす。

「いかにも何かでそうだな。だが祠がありそうな気がする。覚悟は出来てるか?行くぞ」

「え、ええ、あら?」

息をのむミレイアはこわごわと返事をしたが肩に何かが当たって自分の肩を見る。
それをラミンが持ち上げた。

「この木の実だな」

「あっ待って!」

ぽいっと放り投げようとしたラミンの手をミレイアが止めた。
実を取り上げるとまじまじと艶やかな赤い実を見る。

「持って行け、とこの木が言ってるみたい。木の実は持っていきましょう。滋養強壮にもいいと言っていたわよね?何かしら役に立つと思うわ」

振り向きラミンに訴えると鞄を開けあのハンカチを出すと大事そうに包み鞄にしまった。

「そうか?まあいっか。よし、これ以上暗くなる前にちゃっちゃと行くぞ」

そう言うと馬を走らせ左の路に向かった。
林道を行くと段々と下り坂になり谷底へと道は続く。
辺りの木も鬱蒼として林というよりも森の中に入っているようだ。
細い獣道を低い木を避けながら進んでいくと大きな岩がごろごろと転がっていて少し開けたところに来た。
辺りを見回すともう少し下に一際大きな岩があり青白い光を放っていた。

「あれは結界か?」

近くまで馬で行き降りて辺りを見回す。
少し上は先ほど通った獣道。下の方には小川が流れてるらしい。水音が聞こえる。
ぐるりと岩の回りを歩くと岩と岩の間に洞穴のような人が通れるような穴があった。

「ここか…」

「この中に祠が?結界が張ってあるようだけど…」

青白い光を触ろうと手を伸ばしたミレイアをラミンが止めた。

「何があるかわからない。お前はむやみに触るな」

そう言って後ろに下がらせるとゆっくりと腕を伸ばす。
すうっと青白い光を通り抜けた腕。

「結界か?これ、何も感じないが…」

「そうなの?じゃ、私も」

「あっやめっ…」

ついつい好奇心で手を伸ばしたミレイアにラミンも焦ったが、ミレイアの腕も何事もなく青白い光をすり抜けた。

「…これ、結界じゃなくてただ岩が光ってるだけなんじゃないのか?特殊な鉱石が混ざってるとか?」

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