魔法の鍵と隻眼の姫
この世界にも光を溜めて光る石や暗いところで光る石もある。
珍しい物だがそれほど価値もない。

「この青白いのを夜中とかに見たら確かに不気味かもな」

「だから人々は恐れて近づかなかったのね」

「よし、危険も無い様だし入ってみるか」

二人頷き合うと洞穴の中に入って行こうとした。
するとバチッと火花が散ってミレイアの髪の中から何かが飛び出した。

「えっ?!」

「何だ!?」

振り向くと草の上に目を回しているノニがいた。
慌ててミレイアが駆け寄りノニを手のひらに乗せる。

「なんだ、どこから出てきた?」

ラミンも追いかけ伸びてるノニを覗き込む。

「たぶん私の髪の中にいたと思うんだけどなぜ急に…」

「小娘、お前は大丈夫なのか?」

「え?私?私は何ともないわ」

キョトンとした顔をしてラミンを見上げるミレイアに、ラミンは顎に手をやり考え込んだ。

洞窟の中に入ろうとした途端ノニが弾き出された?
やっぱりこの青白い光は結界なのか?
ならなぜ、俺とこの小娘は何事もなく入れたんだ?

可愛そうにとノニを撫でるミレイア。
暫くすると気が付いたノニがふらふらと飛び上る。
大丈夫?と心配するミレイアにフラフラしながらうんうんと頷く。

「ノニ、悪いがもう一度洞穴に入ってみてくれるか?」

もう一度確かめたいと思いノニに言ったがノニはとんでもない!と言うようにぶるぶると首を振った。

「やっぱり、この青白い光は結界なのか?」

ノニに聞いてみると今度は勢いよく縦に首を振る。
やっぱりそうか…。
ハッと思いついたラミンはフィーダを連れて来ると洞穴に向かった。

「何してるの?ラミン」

何をしてるのかわからないミレイアは聞くがラミンは答えず、フィーダの鼻先を光に近づけた。
バチッ!
小さな静電気のようなものが発生し、驚いたフィーダが一瞬前足を上げブルルっと鼻を鳴らした。

「どうどう、大丈夫だ、悪かったな。もうそっちで草食ってていいぞ」

フィーダを落ち着かせ離すと大人しくウォルナーのいる草むらに向かって行って草を食んでいる。

「やっぱりこれは結界なんだ。でもなぜ、俺たちは大丈夫なんだ?」

首をひねるラミン。
結界を見上げたミレイアはぽつりと言った。

「私たち招かれてる?」

「……」

目を合わせた二人はしばらく固まっていたが、ラミンはノニに振り向いた。

「ノニ、俺たちは中に入ってくるからお前は馬たちが魔物に襲われないように守ってくれ、いいな?」

ラミンに言われ、調子を戻してきたノニはくるくると飛び回りうんうんと頷いた。
頼むぞっと言ってミレイアと頷き合い、もう一度洞穴に足を踏み入れた。
やはり何事もなく入ることが出来、振り向いたミレイアはノニを見た。
ノニは心配そうな顔で飛び回っている。

「ノニ、きっと大丈夫だから行ってくるわね?」

うんうんと頷くノニを残し奥へと入って行く。
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