魔法の鍵と隻眼の姫
中も青白く光っており灯は必要ない。
意外と奥深く足を進めるうちに小さな水晶が所々に生えるように突き出ている。
それも奥に行くにつれ大きくなっていった。
ぴちょんぴちょんと水が滴る音がして足元はぬかるんでいる。
恐々と周りを見ながら歩くミレイアの手の甲に水が滴り落ちた。

「きゃんっ!」

「あっおい!」

手に冷たい物が付いて驚いたミレイアがずるっと足を滑らせラミンにぶつかった。
ラミンは焦りながらもその身体を支え抱き寄せる。

「ったく、あぶねえな」

「ご、ごめんなさい。何かが手に…!」

顔を上げると意外とラミンの顔が近くにあり息を呑んだミレイア。
そんなのも構わずミレイアの手を拾い上げたラミンはため息をついた。

「なんだ、ただの水じゃんか。驚かせんな」

「え?あ、うん…」

抱きしめていた手を緩めミレイアをちゃんと立たせると額を小突いた。

「にしても、犬みたいな驚き方だな?面白いなお前」

「むっ犬じゃないし!」

クククッと笑うラミンに頬を膨らましたミレイアはぷいっと顔を逸らし一人奥へ進もうとする。
そこでまたずるっと滑った。

「わっ!」

後ろにひっくり返るのを覚悟したミレイアが目を瞑るとぽすっと温かい物に包まれる感じがした。

「おい小娘、一人で先行くな。転んで泥だらけになるぞ」

「……」

支えてもらったことよりまた転びそうになって呆れられため息をつかれたことにムッとしたミレイア。
むくれてるミレイアを見てフッと笑いラミンはその手を取った。

「ほら、一人で行くと危ない。行くぞ」

手を引き慎重に先へと進むラミンの横顔をちらっと盗み見たミレイアは目線を握られた手に移した。
何度か手を握られたがいつも温かいその手に自分の心も温かくなるのを感じたミレイアは小さく呟いた。

「ありがと…」

「ん?なんか言ったか?」

横目で見おろされてぶんぶん横に首を振ったミレイアは繋いだ手をきゅっと握った。
一瞬目を見開いたラミンはにっと笑いその手を握り返した。

温かい…。
手からの温もりが二人の距離も縮める。

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