魔法の鍵と隻眼の姫
急にミレイアの手首が掴まれシャルーの手から引き剥がされる。
何事かと上を見ると冷気を漂わすラミンが見下ろしていた。

目を見開くミレイア。
さっきまでアマンダとイチャついていた筈なのになぜここにいるのか?
掴まれた手首が熱い。
他の男達も唖然とラミンを見上げる。

「もう時間も遅い。帰るぞ」

そう言うと掴んだ手を引っ張り上げミレイアを立たせた。

「おい、あんた横暴だな!もっとミミちゃんに優しくしろよ…!」

シャルーが果敢に立ち上がりラミンに食って掛かったが、ジロリと睨まれその冷気に固まった。

「行くぞ」

シャルーを無視してミレイアに言うと手を引っ張り行こうとする。

「ちょっと待って!」

二、三歩歩かされ掴まれた手をなんとか引き離したミレイアは振り返るとシャルー達ににっこりと笑った。

「皆さんとお話出来てとっても楽しかったです。ありがとうございました。どうか皆さんお元気で」

凛とした佇まいで優雅に礼をするミレイアに皆は釘付けとなり呆けた顔になる。

その間に踵を返したミレイアは立ち去っていった。

「何か、ミミちゃんがお姫様に見えた」

ポツリと呟きポスンと椅子に座ったシャルーに回りの皆も同調する。

「ああ、まるで王女様の気品ってやつが漂ってる感じ?」
「何だよ、王女様なんて見たこともないくせに」
「でもその感じわかる気がする…」

ほう、と全員がため息をついたときシャルーがテーブルに置かれたままのミレイアの軟膏に気がついた。

「返さなきゃ!」

軟膏を持つとシャルーは出口へと急いだ。
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