魔法の鍵と隻眼の姫
顎に手をやり行こうかどうしようか考えるラミン。

「シエラ王国に寄ってたらバットリアに行くのが遅くなるわ!私の情報の方が有力なんだからシエラに行くだけ無駄よ」

シエラ王国に寄るとバットリアに着くのは早くても2週間は掛かる。
一緒にいられるのが長くなるのは嬉しいがバットリアで一座の皆と合流しないとその先何処へ行くのか聞いていないアマンダはシエラ王国に行くことを拒んだ。

「んん、そうだな…。有力な方を先に行くか…」

アマンダの話に乗ってしまったラミンに怪訝な顔をするミレイア。

「バットリアで鍵が見付けられなかったらその後アレキサンドに行こう、それでいいだろ?」

仕方なく頷くミレイアの頭をもう一度ポンポンと撫でた。

また優しい顔で小娘の頭を撫でるラミンに業を煮やすアマンダは気を引くように腕を引っ張る。

「ねえラミン、今日あたしの部屋に泊まってよ。どうせ二部屋取ってるんでしょ?一部屋減らせるから節約にもなるでしょ?」

「いや、元々一部屋しか取ってないんだが」

「え?一部屋だけ!?」

いつの間にか宿の前まで着いてアマンダがラミンを誘うが、まさかラミンと小娘が一緒の部屋に泊まるとは思わなかった。

「ああ、護衛だから離れる訳にはいかないからな」

初日からそうだったからと特に含みもなくラミンが答える。
そんなの許さないとでも言うようにアマンダが巻き付く腕にぎゅっと力を込めた。

「護衛だからって一緒の部屋に泊まること無いでしょ?まさかラミンこんなお子さまに手を出してんじゃないでしょうね!?」

「んなわけあるか!」

「じゃああたしの部屋に来て!こんな所で危険も無いでしょ?」

はあとため息を吐くラミンを引っ張り宿へと入るアマンダは耳元で囁いた。

「ね、いいことしようよ、久しぶりに」

ばっとアマンダを凝視するラミンにウィンクをして後ろのミレイアをちらりと見た。

「ラミン、今日は私一人になりたい」

二人の様子にミレイアはこれ以上この二人を見たくないと俯く。

「でも何かあったら…」

心配するラミンに首を振って拒んだ。

「ノニがいるから大丈夫よ。もう疲れたから休むわね。お休みなさい」

そう言うとカウンターに行き鍵をもらいさっさと上へ上がって行った。

< 69 / 218 >

この作品をシェア

pagetop