白雨の騎士
「…シド・メルヴィス」
名前が呼ばれると額から汗が一筋流れ落ちた。
部屋の中に入ると男性3人が待ち構えていた。
シドは用意された椅子に腰かけた。
「…さて、まずは簡単な自己紹介をお願いします」
一番左に腰掛ける男性が言った。
シドは背筋を正した。
「…シドです。今はアーデル家で農業の仕事をしています。子供の頃から近衛になる事が夢でした」
大きな声で答えるシドに、面接官たちは用紙に何やら書き綴った。
「…腰にあるのは、君の剣かい?」
今度は真ん中の面接官が問いかけた。
「はい!刀鍛冶をしている私の師匠から頂きました。師匠からは8歳の頃より剣術を習っています。」
シドは質問される度に心臓が飛び出そうになった。
手にはジンワリと汗が滲んだ。
「…じゃあ、最後にもう少しこちらへ寄って立ち上がってくれ。」
最後に…?
まだ二つ質問されただけだが、言われるままに一歩前に出て立ち上がった。
3人の面接官は眼鏡をずらしまじまじと顔を見つめた。
「…はい、じゃあもういいよ。」
「え……」
面接官の言葉にシドは立ち尽くしたが、それ以上何も問いかけてこない3人を前に、頭を下げて部屋を出た。
面接の時間はほんの2.3分ほどだった。