偽物の恋をきみにあげる【完】
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──木曜日。

今日から2泊3日で大雅と四国旅行だ。

結局いろいろとわからないままだが、一旦忘れて旅行を楽しむことにした。

駅で待ち合わせをして、高速バスで空港に向かう。

昨日の夜はぐっすり眠れたのか、今日の大雅は体調がよさそうだ。

「行き先、高知なんだね」

大雅の生まれ故郷は高知なんだそう。

高知のことはよく知らないけれど、最近龍馬の話題を何度か話したばかりだし、わりと楽しみだ。

「あ、瀬戸大橋とか見に行きたい?別に時間は全然取れるよ。なんなら延泊してもいいし」

「高校の修学旅行で行ったから大丈夫でーす。小豆島行ったんだよ」

「うっそ、俺、中学も高校も、京都中心本州コースなんだけど!」

「わーかわいそー。あ、そういえば中学ん時の修学旅行同じ班だったよね」

「だね。部屋別で全然意味なかったけどな」

「え、なんで? 同じ部屋だったらなんかあったの?」

「襲ってた。つーか実際夜這いしに行くか真剣に悩んだし」

「うわー……思いとどまってくれて本当によかったわ」

「いや、瑠奈達の部屋に忍び込もうとしたら、先生に見つかったんだよねー」

「思いとどまってなかった!」

静かなバスの中で、恥ずかしげもなくそんな馬鹿な話をして過ごした。
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