偽物の恋をきみにあげる【完】
それから路面電車に乗り、高知城へ向かった。

「瑠奈、路面電車の別名知ってる?」

大雅がニヤニヤと笑いながら訊いてくる。

「……チンチン電車でしょ?」

「え、なに? もっかい言って」

「……アンタは小学生なの?」

馬鹿だし下品だし、やっぱり大雅がコタローくんなんて気のせいだ、気のせいであってほしい。

高知城は山内やまのうち一豊かずとよが建てた城で、日本で唯一本丸が完存していて、国の重要文化財がたくさんあって……いろいろ説明を受けたが、私は城にも歴史にも明るくないのだ。

でも、高知城の見た目の美しさというか、凛とした佇まいにとても惹かれた。

2人共かなり運動不足なのか、はあはあ息を切らしながら石段を登り、天守閣へ。

しかし、大雅の方が私より息切れしているのはどうなのだろう。

「もうじじいなんだよ~」

そう情けない声を上げる大雅が、本当におじいさんに見えてきた。

とにかく城のことはわからない私は、他の城と内部がどう違うのかさっぱりだった。

でも眺めは本当に素晴らしかった。

大雅も私も、別に何かに投稿するわけでもないのに、やたら写メを撮りまくった。
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