偽物の恋をきみにあげる【完】
桂浜に来たので、もちろん龍馬像も見た。

前にコタローくんと龍馬像の話をしたので、送ってあげようと思い、写メを撮り始めた。

けれど、ふと気づく。

もしも大雅がコタローくんだったら、写真はいらないのでは。

だって、大雅もさっきから、隣で写メを撮りまくっている。

コタローくんか否か。

旅行中は考えないと思いつつも時折考えているが、真実は全くわからない。

心とカラダ、全く対極に私を満たしていた2人が、同一人物?

それは、2人が別人であるよりも歪な気がした。

だって、二分割する必要性がわからない。

それに。

決して「好き」だと言ってくれない大雅、たくさんの「好き」をくれるコタローくん。

2人を同一だと考えると、大雅は私のことが好きということになる。

でも、大雅は私にはっきりと言ったのだ。

私のことは「好きじゃない」と。

やっぱり、大雅=コタローくん説は、飛躍し過ぎかもしれない。

「瑠奈ー、そろそろ旅館戻る? さみーし」

「そだね、そうしよ」

「あ、一緒に写真撮る?」

「うん、撮る!」

龍馬像の前でツーショット写メを撮ってから、私達は桂浜をあとにした。
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