偽物の恋をきみにあげる【完】
夕食の前にお風呂に入り、寒さで冷え切った体を温めた。

お風呂は展望露天風呂で、浴槽の幻想的なライトアップも夜景もとても綺麗だった。

男女別なので、一人ぼっちでの入浴なのが少しだけ残念だ。

湯上がりの大雅の浴衣姿は、見とれるくらい色っぽくて、不覚にも興奮してしまった。

大雅はそもそもイケメンだが、濡れた髪と浴衣の破壊力がすご過ぎる。

実は私、浴衣フェチかもしれない。

夕食はとても豪華だった。

「お刺身、すごい美味しい!」

「皿鉢さわち料理な」

「さわち料理って言うの? へえ」

普段アホなことしか言わない大雅が、物知りな所ばかり見せるので、なんだか少し悔しい。

名物の鰹のタタキやうつぼの唐揚げ、そして金目鯛の煮物など、海の幸満載の料理に、私も大雅も大満足した。

のんびりしたあと、もう一度お風呂に入って部屋に戻ったら、布団が敷かれていた。

「瑠奈、枕投げやろうぜ」

大雅が子供みたいな無邪気な顔で言った。

私は返事もせずに、枕を拾って投げつけた。

「おま、きたねー!」

「真剣勝負にきたないも何も……いったーい!」

喋っている途中で、枕が飛んでくる。

しばらく熱い戦いが続いた。
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