偽物の恋をきみにあげる【完】
駅からそう離れていない所にある寿司屋で、軽く飲みながら夕食をとる。
私も何度か来たことがあるこの寿司屋は、大雅の職場御用達の店なんだそうだ。
8席のカウンターにテーブル席が2つ、決して広くはないこのお店は、実は2階がお座敷になっていて、新年会忘年会などで利用されることも多いのだ。
それにしても、まさか仕事で同じ駅を利用しているなんて。
今までよく会わなかったものだ。
「あ。瑠奈さあ、再来週の日月って空いてる?」
「日月? 土日じゃなくて? 月曜って祝日かなんかなの?」
カレンダーを確認しようと、さっきバッグに閉まったばかりのスマホを漁っていたら、
「うん、そうそう。祝日ー」
そう答えながら、大雅は私の目の前の中トロに手を伸ばした。
「あっ、なんで! 待って!」
慌てて止めた時には、中トロはもう大雅の口の中だ。
「ひどーい!」
「ずっと食べないから、嫌いなのかなって思うじゃん」
「好きなものは最後に食べる主義なの!」
「ふーん。でもその『最後』が思った通りに来るかわかんなくね?」
「え、どゆこと?」
「最初に食べないとなくなっちゃうかもよ? こんな風に」
大雅は私の残り一貫の中トロにも素早く手を伸ばし、ぱくりと食べてしまった。
「ちょっ! ひどっ! ……あー、もうっ」
まあ、ここで怒っても中トロは返ってこないし、いっそ追加注文した方が早いので、私は矛を収めることにした。
私も何度か来たことがあるこの寿司屋は、大雅の職場御用達の店なんだそうだ。
8席のカウンターにテーブル席が2つ、決して広くはないこのお店は、実は2階がお座敷になっていて、新年会忘年会などで利用されることも多いのだ。
それにしても、まさか仕事で同じ駅を利用しているなんて。
今までよく会わなかったものだ。
「あ。瑠奈さあ、再来週の日月って空いてる?」
「日月? 土日じゃなくて? 月曜って祝日かなんかなの?」
カレンダーを確認しようと、さっきバッグに閉まったばかりのスマホを漁っていたら、
「うん、そうそう。祝日ー」
そう答えながら、大雅は私の目の前の中トロに手を伸ばした。
「あっ、なんで! 待って!」
慌てて止めた時には、中トロはもう大雅の口の中だ。
「ひどーい!」
「ずっと食べないから、嫌いなのかなって思うじゃん」
「好きなものは最後に食べる主義なの!」
「ふーん。でもその『最後』が思った通りに来るかわかんなくね?」
「え、どゆこと?」
「最初に食べないとなくなっちゃうかもよ? こんな風に」
大雅は私の残り一貫の中トロにも素早く手を伸ばし、ぱくりと食べてしまった。
「ちょっ! ひどっ! ……あー、もうっ」
まあ、ここで怒っても中トロは返ってこないし、いっそ追加注文した方が早いので、私は矛を収めることにした。