偽物の恋をきみにあげる【完】
「……で? 来週の日月がなんだっけ?」

軽くため息をつきながら、私は尋ねた。

「再来週」

「再来週ね……って月曜! クリスマスイブ!?」

カレンダーを見て私が声を上げると、大雅は「正解」と親指を立てた。

「日曜日、どっか泊まろ?」

「えっ、泊まり!? 24ってイブだよ!? 私と!? どこに!?」

つい興奮して、矢継ぎ早に質問を浴びせてしまった。

だってまさか、クリスマスイブを一緒に過ごせるなんて!

大雅の猫目が、可笑しそうに細い弧を描く。

「あはは、質問は1つずつオナシャス」

「えっと……イブなのに私と過ごしていいの?」

「瑠奈、どうせ暇だろ?」

「なっ……まあ否定はしないけど。どっかって、どこに?」

「いい感じのホテル」

いい感じのホテル……一体どういうラブホテルが『いい感じ』なのだろう。

恥ずかしいコスプレが豊富とか、三角椅子や手錠みたいな怪しいアイテムが充実しているとか?

少しだけ不安だ。

いや、そんなことより。

「……それより大雅、泊まり、大丈夫なの?」

遠慮がちに尋ねる。

実は私は、大雅の寝顔を見たことがない。

彼は再会したあの日を除けば、ただの一度も、朝まで私と過ごしてくれたことがないのだ。
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