偽物の恋をきみにあげる【完】
「大河は、私のこと好きー?」

「はいはい好きですよー」

「ほんと!?」

棒読みで答えたのに、月奈はとても嬉しそうに顔を綻ばせた。

可愛い。

顔が近過ぎて思わずキスしたくなったけれど、さすがにぐっと堪えた。

「うん、好き好き。だから言うこと聞いて。帰ろ?」

「やだー」

「……明日仕事だろ? 寝なきゃ辛いじゃん?」

「じゃあ大河、一緒に寝よー?」

頼む……誰か助けて。

「……俺が一緒なら帰るの?」

「うん!」

「……わかった。じゃタクシー乗ろ?」

深い溜め息をつきつつ言えば、月奈はコクリと頷いて、俺にまわした手を引っ込めた。

俺はやっとベンチから腰を上げた。

月奈も立ち上がったものの、立つなりフラついたから、慌てて抱きとめる。

細くて小さい月奈の肩。

コイツのふわふわの髪の毛からは、やたらいい匂いがして、心も身体もざわついた。

いっそ酒臭かったらよかったのに。

……どうしよう。

本当に一緒に寝るの?
< 212 / 216 >

この作品をシェア

pagetop