偽物の恋をきみにあげる【完】
「時間ないから今日はホテルね」
寿司屋を出た所で大雅が告げた。
私は黙って頷く。
夜の繁華街を、ホテル街に向かって歩き出した。
すれ違う女性達が、大雅にチラチラと視線をやるのがわかる。
スラリと背が高く、綺麗に整った顔をした、まるでモデルみたいな隣の彼。
誰が見ても間違いなくイイ男で、そんな彼と歩いている私は、ちょっとした優越感に浸れるのだ。
でも……。
並んで歩く私と大雅の間を、12月の空っ風が通り抜けた。
「うわ、さみー!」
「ね、寒い!」
どんなに寒くても、私達は決して寄り添ったりはしない。
私は大雅の『恋人』ではないから。
再会して以来、何度キスして何度体を重ねても、私達の間に「好き」や「愛してる」の言葉が交わされたこともない。
セックスして、終わったらばいばい。
それでも、大雅と過ごす時間を愛おしいと思うのは、これが恋愛だからなのだろうか。
……いや、きっとこれは、恋に似た何か。
こんなのカラダだけの、偽物の恋だ。
不意に、並んで歩く私と大雅の手が触れた。
「あ、わり」
恋人ならそのまま手を繋ぐはずなのに、そうできたら冬の夜道もきっと暖かいのに。
大雅は謝った。
とっくに私のカラダの隅々まで犯しているくせに、手が触れただけで謝るなんて。
ちゃんちゃらおかしい。
寿司屋を出た所で大雅が告げた。
私は黙って頷く。
夜の繁華街を、ホテル街に向かって歩き出した。
すれ違う女性達が、大雅にチラチラと視線をやるのがわかる。
スラリと背が高く、綺麗に整った顔をした、まるでモデルみたいな隣の彼。
誰が見ても間違いなくイイ男で、そんな彼と歩いている私は、ちょっとした優越感に浸れるのだ。
でも……。
並んで歩く私と大雅の間を、12月の空っ風が通り抜けた。
「うわ、さみー!」
「ね、寒い!」
どんなに寒くても、私達は決して寄り添ったりはしない。
私は大雅の『恋人』ではないから。
再会して以来、何度キスして何度体を重ねても、私達の間に「好き」や「愛してる」の言葉が交わされたこともない。
セックスして、終わったらばいばい。
それでも、大雅と過ごす時間を愛おしいと思うのは、これが恋愛だからなのだろうか。
……いや、きっとこれは、恋に似た何か。
こんなのカラダだけの、偽物の恋だ。
不意に、並んで歩く私と大雅の手が触れた。
「あ、わり」
恋人ならそのまま手を繋ぐはずなのに、そうできたら冬の夜道もきっと暖かいのに。
大雅は謝った。
とっくに私のカラダの隅々まで犯しているくせに、手が触れただけで謝るなんて。
ちゃんちゃらおかしい。