偽物の恋をきみにあげる【完】
今夜も例外なく、夜の10時に解散した。

いつもなら急に夢から覚めたような虚しさに襲われるが、今日はクリスマスイブの約束のお陰で、私の足取りは軽い。

寒さも忘れ、クリスマスソングの鼻歌なんて歌いながら家路に着いた。

そういえば、久しぶりに「じゃあね」「おやすみ」の言葉を面と向かって交わした気がする。

ここ最近は、大雅が帰る時に私はいつもシャワーを浴びていて、バスルームのドア越しに「ばいばい」と告げるだけだ。

もちろん、わざとそうしている。

だって私は、いつだって彼と離れ難いのだ。

別れ際、つい「もう少し一緒にいたい」なんて引き止めてしまわないように、私はバスルームに避難する。

そうして自分からバスルームに閉じこもったくせに、ドアが開くのを待っている。

「もう少しだけいようかな」とか「やっぱり今日は泊まろうかな」という台詞を待っているのだ。

でも恋人ではない彼は、そんな甘ったるい言葉はかけてくれない。

私は大雅の恋人ではないのに、その自覚が足りていなさ過ぎる気がする。

駄目だ、ちゃんと一線引かないと。

お泊まりイブに浮かれている場合ではない、あれはただの『ヤリまくり(す)ます』だ。

「……うわあ」

一線引くどころか、あまりの下品さに自分でドン引きした。
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