偽物の恋をきみにあげる【完】
瑠奈のカレーが食べたい。

なんだそれ。

コイツはどうして、わざわざ『瑠奈の』なんて言うのだろう。

「……あははは。大袈裟だなあ。そんなに美味しかった?」

でもきっと、大雅は全力で褒めてくれただけだ。

私は無駄に大きな声で笑った。

こんな小さなことでも私が動揺してしまうのを、たぶんコイツはわかっていないだけだ。

「いや、瑠奈のカレー、世界一美味いよ。一生食ってたい」

ほらまた。

「……なーに言ってんの!」

いちいち動揺するな、こんな言葉になんの意味もない。

私は私に、必死でそう言い聞かせる。

「そんなこと言うと、ほんとに一生食べさせるよ?」

冗談ぽく笑って立ち上がった。

そうだ、大雅のおかわりを入れに行かなきゃ。

しかし、キッチンに向かう私の背中に、さらに無神経な言葉を浴びせられた。

「へえ。瑠奈、俺と結婚したいの?」

「な……何言い出してんの急に!」

あまりに驚いて振り向けば、大雅は腹が立つほどヘラヘラとした顔で笑っていた。

「だって、一生食べさせるーなんてプロポーズみたいじゃん。ドッキドキ」

「いや、それは大雅が」

反論する私の言葉を遮って、

「でも、ごめんねー。お前と結婚はできねーな」

やっぱりヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべたまま、大雅ははっきりとそう言った。
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