偽物の恋をきみにあげる【完】
「友達って女の子?」

いつもならここで終わるはずが、乗り込んだエレベーターが不幸にも2人きりだからか、主任は話を膨らませてくる。

「あー、ええ、そうです」

「へえ、オレも一緒に行きたいなー」

「は?」

ぽかんと口を開けた途端に、エレベーターが1階に到着してドアが開いた。

企画部は3階なので、あっという間なのだ。

「あ、今日の飲み会、女性だけじゃなく男性もいるんで」

これ以上食いつかれたくないので、サラッとかわして早足で歩き出す。

「え、そうなの? じゃあいつが暇なの?」

しかし、平野主任も慌てて私の後を追ってくる。

「いつが暇と聞かれましても、うーん」

今日は何故、こんなにもしつこいのか。

エントランスを抜けて、駅に向かう道でも、主任は隣に並んでついてくる。

主任も駅に向かっているだけかもしれないが、迷惑千万だ。

「オレ、及川さんすごくタイプなんだよね」

なに、その安っぽい口説き文句は。

女なら誰でもいいくせに。

それに私は全然タイプじゃない。

「それはありがとうございます」

「だから、ね? 1回飲みにでも行こうよ」

冗談じゃない。

その1回に付き合ったら、確実に食われるに決まっている。
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