あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
数ある役割の中でも俺が最もやりたくなかった係、それがこの呼び込み係だった。

まだ暑さの残る中、一体何が悲しくて学校中を歩き回らなければならないのか。最悪の結果だ。
しかしペアの子が九重なことが救いだ。これで一度も話したことのない女子だったら気まずくてありゃしない。
九重は二年生の頃からクラスが一緒で、しょっちゅうではないがときたま会話をする仲ではある。
気心が知れていて楽だ。

「よろしくね、響」

「ああ、よろしく」


呼び込み係は大変だったが、そのぶん売り上げも伸びやった甲斐はあったと思う。
二日間の呼び込みを終え、あとは後夜祭のみとなった。


その後夜祭で俺は九重に告白された。
なんでも二年生の頃からずっと俺のことが好きだったらしい。
俺も九重は二年からの付き合いで、特に断る理由もなかったので即OKした。

先輩の時と同じで、相手側は俺に恋愛感情を持っているにもかかわらず俺は恋愛感情をもっていない。前回の反省が生かせていないとは思うが、そこはあまり気にしていない。
告白された時点で俺に好きな子も気になる子もいなかったから。


杏奈は塾に通っていたので、杏奈の塾がない日だけ一緒に帰っていた。
お互い勉強があったから、デートに行くこともなかったが順調な付き合いだった。
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