スイート ジャッジメント 番外編

 去年、吉沢くんと湊は同じクラスだったから、見かけることはよくあったけれど、1度も話したことは無い。背が高いのは湊も同じだけど、湊とは物腰もだいぶ違って、吉沢くんの方が威圧感がある。

「さぁ? どっかで女子に囲まれてんじゃね? あいつ今日、目立ちすぎ」

「だいぶ前から居ないよな。試合までに戻ってこなかったら笑うわ」

 呆れたように笑った高橋くんと時田くんは、湊と同じクラスのサッカー部員。ある意味、今回の湊と武田の勝負で1番とばっちりを受けていると言える二人だ。

 女の子に囲まれているのは、大いに有り得るけど、私としては嬉しくない。きっと、さっきの子達のように思っている子は、沢山いるだろうし……。

 目の前で交わされる会話は上の空。さっきの女の子達の会話を思い出してしまう。

 ぼんやりとしていた私の頭の上に、またずしりと何かが乗っかって、同時に肩にも腕を回された。だけど、顔は見えなくともそのどこか身体が覚えている感覚に、今度はちゃんと湊だ、と安心した。

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