俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
「あっ…。こちらこそ、すみません。ドリス国に来るのは初めてでして…」

そう言って男性は顔を上げる。整った顔立ちの優男だ。歳は、おそらくクリスタルと同い年か少し年下くらいだろう。

「リーバス・ヴィンヘルム……?」

驚いた顔で、男性が呟く。俺の名前は世界平和対策本部ができた際に新聞に載っているので、知っている人がいてもおかしくはないだろう。

「はい。私はリーバス・ヴィンヘルムです。失礼ですが、あなたは?」

「私は、フィリップ・カークランドです」

微笑みながら話す俺とは対照的に、俺を敵視しながら話す男の名前には、どこか聞き覚えがあった。

そうだ。この名前は、一年前にタンバリー国にクリスタルと国王に会いに行った際に聞いた名前だ。

「私はノール国の王子です。クリスタル王女と結婚する予定でした」

淡々と王子は話す。俺は慌てて「失礼しました!」と頭を下げた。

ノール国…ロール国の近くにある国だ。ロール国のように寒い。しかし、福祉が充実していて幸福の国とも言われている。

「そんなに固くならないでください。あなた、恋人にそんな態度は取らないんでしょう?」

俺を睨みながら、フィリップは言った。フィリップはクリスタルよりも年下で、まだ二十歳だ。
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