俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
孤児院に近づくと、子供たちの大声が道に響いてきていた。とても懐かしさを感じる。運良く仲間たちと再会できないだろうか。そんなことを思っていると、怒りも少しずつ治まってくる。

もうすぐ、愛しい人に会える。そしたら全て忘れてしまおう。たくさんクリスタルに触れて、話して、フィリップのことなど記憶の彼方へ追いやればいい。この時は、そう思っていた。

「お姉さん帰っちゃうの〜!?」

「次はいつ来るの!?」

門まで近づくと、クリスタルが子供たちに囲まれていた。

「私は、二週間後にここにまた来ます!その時にまた一緒に遊びましょう!!」

子供たちと同じ目線になり、子供のような無邪気な笑顔でクリスタルは話しかける。その笑顔はきっと、人を癒す魔法の笑顔なのだろう。

「クリスタル!!」

俺は門をくぐり、声をかけた。クリスタルが俺の方を見て、嬉しそうに笑う。

ゆっくり歩き出した俺の横を、素早く誰かが走って行った。

「初めまして、クリスタル王女。フィリップ・カークランドです。……あなたを攫いに来ました」

そう言って俺の怒りの原因は、クリスタルにキスをした。

子供たちが「キス〜!!」とはしゃぎ、クリスタルは驚いた顔をして必死に抵抗している。

「おい!!クリスタルを放せ!!」

俺は怒りのあまり、相手が他国の王子ということも忘れて声を荒げてしまった。
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