もう、限界だから。〜両片想いの溺愛同盟〜
「俺の女って自覚、ある?」
耳元で囁かれる、健斗の低い声。
何故だか全身がゾクッとした。
なんとか逃げ出したい気持ちのまま、大人しくしていると、健斗が力を緩めてきて。
そのタイミングを見計らって、私は健斗から勢いよく離れた。
「だって、私たちは“恋人のフリ”でしょ?
そんなの自覚も何もない」
それなのに、今さらそんなこと言って。
健斗が怒る意味がわからない。
何が“俺の女”だ。
偽物関係のくせに。
じっと健斗を睨む。
そして少しの沈黙が流れた……かと思えば。
笑った。
健斗が、怖いくらい綺麗な笑い方で。