トリップしたら国王の軍師に任命されました。
「おい……おい、大丈夫か」
低い声に揺さぶられ、明日香は身動きした。
「んうう……?」
全身に痛みを感じる。だるくて起き上がれない明日香は、瞼を閉じたままぼんやりと自分に何が起きたか思い出した。
(たしか、古墳の上を歩いていたら穴に落ちて……)
暗い暗い、そして深い穴だった。落下して体を打ちつける前に、気を失ったようだ。
(竪穴式古墳だからなあ……上の蓋が私の重みで崩れちゃったとか。いや、古墳の中に落ちたにしては、妙に明るくない?)
瞼の向こうに、明るい光を感じる。明日香はもう一度まばたきしてから目を開けた。
「気づいたか」
「……のっ!?」
明日香は仰天した。目を開けたら、知らない外国人が自分の顔をのぞきこんでいた。
青みがかった長い黒髪の下の白い肌には、アクアマリンをそのまま埋め込んだような、水色の瞳。高い鼻、くっきりした目鼻立ち。どう見ても日本人ではない。
(イケメン……イケメンだけど、ちょっと変……)
しかし話しているのは、流暢な日本語だ。
「お前は何者だ? 奇妙ないでたちをしている」
そう眉をひそめる外国人は、薄手のシャツに太腿まであるベスト、腰には太い皮ベルト。腕には黒い手甲、肩には分厚いマントを着用している。