トリップしたら国王の軍師に任命されました。
心の中で文句を言っている明日香を、男は山小屋の中に連れていく。
「わあ」
小屋の中は、思ったよりも広かった。昔遊んだドールハウスを思い出す。
「頭はどうしようもない。とにかく傷の手当てだ。ええと……名はなんという?」
「明日香です」
「アスカ。いい名だ。俺はジェイル」
ジェイルは明日香を奥の部屋に通し、腕から降ろした。すぐそばにはベッドが。どうやら寝室のようだ。
「さあ、それを全部脱げ」
「ええっ?」
明日香は痛みも忘れ、思いきり壁際まで後ずさった。
(親切なふりをして、実は私をいたぶるつもりだったの?)
震える明日香を、ジェイルは咳払いして説得する。
「変な勘違いをしないでくれ。傷を見せないで、どうやって手当するんだ?」
「あ、ああ」
しかし明日香にしてみれば、ジェイルは初対面の外国人であって、医者じゃない。抵抗を覚えるのは仕方がない。
だけど、彼が言っていることもわかる。たしかに脱がなければ、背中がどうなっているかわからない。
「じゃあ、脱ぎますから……あの、背中だけ確認してください」
「そうしよう」
ジェイルはくるりとドアの方を向く。明日香は躊躇しながら、そろりそろりとTシャツとキャミソールを脱ぐ。ブラジャーだけ残した姿で壁の方を向いた。