狼を甘くするためのレシピ〜*
「大丈夫か?」
 顔を上げると、箸を止めたケイが、心配そうに覗いている。

「調子でも悪いのか?」

「そんなことないわよ。絶好調!食欲もりもり」

 こんな鈍感男。
 もう二度と会うもんか!そう思いながら上目づかいにケイを見ると、ニッと白い歯を見せて笑った彼は、自分の定食の小鉢を蘭々の定食のトレイに置く。

「じゃあ、沢山召し上がれ」

 見れば、カボチャの煮物だった。

「子供じゃないんだから食べなさいよ。農家のくせに、なに我儘言ってんの」

 キリキリと睨んだが、ケイはどこ吹く風のように意に返さず、「代わりに食べてやる」といって、大根の漬物を取った。

「あ! 私の大根取らないで!」

「え?食べないんだろ。この前、大根食べると臭いが気になるとか言ってたじゃないか」

「今日は食べたかったの!」

 見せつけるように大根の漬物を口に入れたケイは、アハハと楽しそうに笑う。

 ――あーもう!どうして、私はここで大根とカボチャでケンカをしなくちゃいけないわけ?

 さっさと食べて店に戻ろう。そう思いながらカボチャの煮物を口に入れると、

「寂しかったぞ」

 ふいに、ケイがそう言った。
< 122 / 277 >

この作品をシェア

pagetop