狼を甘くするためのレシピ〜*
「ん?」

 振り返りざまに、引き寄せられた腕。

 アッという間に抱き寄せられて、髪の上から落とされたキス。

「それ以上、キレイにするな」

 ケイが耳元で囁いた。

 ――え?

「妬けるだろ。みんなお前を見てる」

 耳元でそう囁かれて、真っ赤になった蘭々は、突き飛ばすように手を伸ばしキッと睨んだ。

「な、なによ。あなた彼女とかいるんじゃないの?」

「ん? そういうことは聞かない約束じゃないのか?」

 ――な、なんなのこの男!持ち上げるわ、落とすわ。

 眼鏡を外し、キリキリと歯を食いしばりながら更に睨むと、ケイは言った。

「今日、夕食でも一緒にどうだ?」そして、蘭々も知っているカフェの名前を告げる。

「行かない!」

「七時まで待って来なかったから、一人で行くから気にするな。もしお前が来たら、これをプレゼントするよ」

『コルヌイエ』の紙袋を片手でもちあげて、ニヤリとケイが笑う。

「ふざけないでっ!」

「じゃあなー、待ってるぞ。俺こっちだから」

 笑いながら手を振って、ケイは路地の先へと歩いていった。


 悔しいほど、楽しそうな笑顔を残して。
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